2015 Fiscal Year Research-status Report
運動性の異なる複数種の鞭毛ダイニンによる協調的力発生の研究
Project/Area Number |
15K07067
|
Research Institution | National Institute of Information and Communications Technology |
Principal Investigator |
榊原 斉 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所 バイオICT研究室, 主任研究員 (90359076)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 鞭毛ダイニン / 人工配列 / 協同性 |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の鞭毛内では、モータ活性の異なる複数種のダイニンが配列しています。本研究の目的は、活性の高い鞭毛ダイニンと低いダイニンを配列した時に どのように協調して微小管と相互作用するのかを解明し、活性の異なるダイニンの配列が鞭毛運動にいかに有利に働くのかをつきとめることです。 本年度は、各種鞭毛ダイニン尾部へのタグ導入、導入位置及びタグの検討 2)アンチタグ導入DNAを足場にダイニンを配列することを目標に研究課題に取り組みました。 多くの内腕ダイニンが持つ軽鎖サブユニット”アクチン”のC末付近のループにHAタグを付加したクラミドモナス株を使用しダイニンの精製を行いました。しかしながら、鞭毛内のダイニン量が減少していたため、十分な量を得ることが出来ませんでした。そこで、タグを付加する位置を最も影響が少ないと思われる、アクチンのC末端にタグを付加したアクチン遺伝子を作成しました。また、タグ付加アクチン遺伝子を導入するクラミドモナス株について、アクチン欠失変異株と内腕ダイニン精製を難しくする外腕ダイニンを除いた二重変異株を作成しました。 また、ダイニンcのN末ドメインの抗体、ダイニンfの140K中間鎖に対する抗体が、微小管滑り運動の発生および運動性の観察を行うインヴィトロ運動アッセイを行う際にダイニンc、fそれぞれの基盤への固定に有用であることを確かめました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初、有用性が高いと期待していたクラミドモナス株からダイニンの精製が困難であったこと、精製法に不備がないことを確認したこと、代替のタグ付加アクチン遺伝子を作成した為、目標のダイニンの人工配列にまで、達成できませんでした。 最初に、鞭毛内腕ダイニンa,b,c,d,e,gの基部に共通して存在する軽鎖サブユニットで、タグを導入してインヴィトロ運動アッセイに使用できれば非常に有用性が高いと思われる”アクチン” のC末付近のループにHAタグを付加したクラミドモナス株を使用し、ダイニンの精製を行いました。しかしながら、鞭毛内のタグが付加されたダイニンの存在量が少なく、実験に十分な量のダイニンの精製ができませんでした。そこで、タグを付加する位置を最も影響が少ないと思われる、アクチンのC末端にタグを付加したアクチン遺伝子を作成しました。また、タグ付加アクチン遺伝子を導入するクラミドモナス株について、アクチン欠失変異株と内腕ダイニン精製を難しくする外腕ダイニンを除いた二重変異株を作成しました。 実験に使用できる状態でアクチンにタグを導入することが困難である場合に対処する為、ダイニンcのN末ドメインの抗体、ダイニンfの140K中間鎖に対する抗体が、微小管滑り運動の発生および運動性の観察を行うインヴィトロ運動アッセイを行う際にダイニンc、fそれぞれの基盤への固定に有用であることを確かめました。
|
Strategy for Future Research Activity |
28年度は、新たに作成したタグ付加アクチン遺伝子のアクチン欠失クラミドモナス株への導入、ダイニンの精製を行い、ダイニン尾部のアクチンにタグを付加することが有効であるのかを最初に調べます。アクチンへのタグの付加がインヴィトロ運動アッセイにおけるダイニンの基盤への固定に有効であるなら、6種類の内腕ダイニンで使用でき、応用範囲が広く、先ずアクチンを標的にします。 同時に抗体を介してDNAの足場にダイニンを固定する試みも同時に進めます。アクチンへのタグ導入が有効でない場合、先ず、ダイニンcのN末ドメインの抗体やダイニンfの140K中間鎖の抗体を使い、ダイニンcとfの配列を試みます。ダイニンに付加するタグはSNAPタグなどアンチタグと強固に結合するものが好ましいですが、HAタグなど小さなサイズのタグしか付加できない可能性もあります。そこで、抗体を介して足場にダイニンを固定することを可能にしておくことは重要であると考えられます。ただし、抗体を使用するためにはプロテインAやアビジンビオチンなどで仲介する必要があり、効率良く配列するために結合の順番等試行錯誤する必要があるかもしれません。 アクチンへのタグ付与が有効であるかどうかを早急に確認し、有効性が低い場合、ダイニンc、f以外のダイニンN末配列の抗体作成を行います。また、クラミドモナスにおいても相同組み換えによる遺伝子組み換えが可能であるとの報告が最近あり、ダイニン重鎖N末端に相同組み換えにより直接タグを付加する試みも行う予定です。 研究計画になるべく早く追いつき、本来の目的である複数種の鞭毛ダイニンを人工的に配列し、運動性の変化、力発生の協同性など観察に着手します。
|
Causes of Carryover |
全額使用する予定でしたが、購入時に合い見積もり等を行い、業者間で価格競争した結果、予想以上に値引きが行われ、余剰金が生じました。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
すべて、DNAプライマーなど物品費に使用する予定。
|