2016 Fiscal Year Research-status Report
Arp5による心筋分化制御機構の解明と直接リプログラミングへの応用
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15K07076
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森田 強 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (80403195)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 心筋 / 分化 / リプログラミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では核内アクチン様タンパク質の一つであるactin-related protein 5 (Arp5)の心筋分化における 役割を明らかにし、さらに心筋細胞への直接リプログラミングにおける分化効率向上因子としての応用を検討することを目標としている。昨年度までの研究により、Arp5が心筋分化において重要な役割を担う転写因子Myocardin(Myocd)と直接結合することによりその機能を抑制することがP19CL6細胞を用いた心筋分化誘導系により明らかになっていた。これを受け、本年度はin vivoにおけるArp5の機能を明らかにするべくアデノ随伴ウイルスを用いてマウスの心臓においてArp5遺伝子の過剰発現を行い、その効果を詳細に解析した。その結果、Arp5の過剰発現により有為な心肥大が観察された。また、組織標本解析により心筋細胞の肥大と心組織の線維化が観察された。そこで、Arp5過剰発現マウスの心臓よりRNAを抽出しマイクロアレイにより遺伝子発現変化を網羅的に解析した。その結果、多くのMyocdターゲット遺伝子の発現が顕著に抑制されている一方、心組織の線維化マーカーとしてよく知られているtype 1, type3 collagenやNPPA、galectin3の発現が顕著に上昇していることが明らかになった。このような心筋症に似た症状は、心筋におけるMyocdノックアウトマウスにおいても見られるという報告があることから、in vivoにおいてもArp5がMyocdの機能を抑制することにより心筋分化、形質維持を負に制御していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題における平成28年度以降の実験計画では、新規Arp5結合因子の単離と直接リプログラミングによる心筋分化効率向上の検討が予定されていた。本年度までに心筋分化におけるArp5の作用機序が明らかになり、Myocdに加えて転写因子MEF2への関与が強く示唆される結果が得られている。これらの結果を受けて、心筋細胞直接リプログラミングへの応用を検討する準備を既に進めており、当初の予定通り順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果から、Arp5の発現抑制が心筋細胞リプログラミングの効率を著しく向上させる可能性が高いと考えられる。そこで、これまでに報告されているリプログラム因子であるGATA4, MEF2C, Tbx5, Hand2に加えArp5のノックダウンを行うことによりリプログラミング効率が上昇するのかを詳細に検討する。また、Arp5がMyocd/MEF2経路を抑制する因子であったことから、リプログラム因子のうちMEF2Cを除いても心筋へのリプログラミングが成立する可能性がある。この点に関しても平行して検討する予定である。
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Causes of Carryover |
予算執行率は97.31%であり、ほぼ計画通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
小額の繰り越し金であるため、次年度の物品購入費の一部に当てる。
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Research Products
(1 results)