2015 Fiscal Year Research-status Report
組織特異的な代謝活性化による形態形成制御機構の解明
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15K07084
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
酒井 大輔 同志社大学, 研究開発推進機構, 助教 (90632646)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 神経管閉鎖 / 解糖系 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究計画に沿って、解糖系阻害による神経管閉鎖不全の誘導法の確立、および組織学的解析による神経管閉鎖不全の原因解明に関する研究を重点的に行った。まず、神経管閉鎖不全の誘導に適した解糖系阻害剤の濃度や添加のタイミングに関して、マウス全胚培養系を用いて詳細に検討した。その結果、体節数4から6の胎生8日目胚を0.1mM 2-DGもしくは28mM Oxamate存在下で培養することで神経管閉鎖不全を特異的に誘導できることがわかった。その際、体幹部の発生や血管形成にはほとんど影響が認められなかった。次に、解糖系関連遺伝子のノックダウン実験を行うために、神経板特異的な遺伝子導入法の開発を行った。極小電極を自作することで、胎生8日目胚の神経板の片側のみに遺伝子を導入し、導入後72時間培養することに成功した。そして、研究計画にあるshRNAを用いたLdhaのノックダウンを試みたが、得られる表現型にばらつきが見られた。転写を介するためタイムラグが生じるのがばらつきの原因だと考え、siRNAを用いて同様な実験を行った。その結果、遺伝子導入側でのみ神経板の湾曲が抑制され、神経管閉鎖における神経板特異的な解糖系活性化の必要性を証明することができた。 さらに、解糖系阻害により誘発される神経管閉鎖不全の原因を組織学的手法により解析した。解糖系阻害胚を固定後、凍結切片を作成して免疫染色を行った。細胞増殖、細胞死、細胞骨格、頂端面収縮のマーカーの局在や発現を解析した結果、解糖系阻害により細胞増殖が若干減少するが細胞死は誘導されないこと、頂端面収縮が阻害されていることがわかった。また、解糖系関連タンパクの局在を調べたところ、Ldha、Aldoa、Pfkfb3などが頂端面側に局在していることが明らかとなり、頂端面収縮への関与が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
すでに次年度の研究計画の一部である、質量分析イメージングによる胚体内での解糖系活性化部位の検出法の条件検討を始めている。また、ATPイメージングに必要なATP蛍光リポーターを分与していただき、遺伝子導入によATP局在の可視化ができるか検討を始めた。これらの理由から、当初の計画以上に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の研究計画では、質量分析イメージングを用いた胚体内での解糖系活性化部位の検出と、ATPの組織内局在の同定を行う予定である。質量分析イメージングに関しては、池川教授のグループにより検出方法の最適化と、解像度の改善が予定されている。予備的実験として、池川教授のグループによりモノヌクレオチドの検出実績があるマウス胸腺をサンプルとして、ATPが同様な方法で検出可能か調べていく。ATPの組織内局在に関しては、エレクトロポレーション法により蛍光リポーターを神経板に導入し、イメージングも並行して行う予定である。まずは、イメージングに適した遺伝子導入の条件検討とリポーター発現コンストラクトの選定、培養方法の検討を行っていく。
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Causes of Carryover |
日本発生生物学会への参加を予定していたが、諸事情により参加することができなかった。そのため、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度、日本発生生物学会に参加する予定であるので、その旅費として使用する。
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Research Products
(5 results)