2015 Fiscal Year Research-status Report
HD-ZIPⅢ遺伝子群による発生制御の分子機構の解明
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15K07098
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 恭子 (大橋恭子) 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90451830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 植物 / 発生・分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホメオボックス遺伝子ファミリーの一つであるHD-ZIPⅢ遺伝子群は、植物の発生過程において非常に重要な役割を果たす転写因子群である。しかしながら、HD-ZIPⅢ遺伝子群はその機能の重要性にもかかわらず、制御の仕組み・標的遺伝子群など、機能の分子実体の多くが明らかになっていない。そこで本研究では、これまでの個体レベルの解析では困難であったHD-ZIPⅢ遺伝子群の標的遺伝子の単離を、培養細胞を用いることにより試みた。 今年度は、シロイヌナズナに5つあるHD-ZIPⅢ遺伝子について、それぞれをエストロジェン添加により過剰発現させることのできるプラスミドを作成した。その際、HD-ZIPⅢ遺伝子内にあるmicro RNAのターゲット配列に、塩基置換を施し(この際、アミノ酸置換は引き起こさないようにする)、micro RNA耐性型のHD-ZIPⅢ遺伝子を誘導できるようにした。次に、シロイヌナズナの懸濁培養細胞に、作成したコンストラクトを形質転換し、3つの遺伝子について形質転換培養細胞株を確立した。さらに、作成した形質転換培養細胞を用いて、エストロジェン添加により各HD-ZIPⅢ遺伝子を過剰発現させた際の遺伝子の発現変動を解析した。その結果、3つのHD-ZIPⅢ遺伝子間で共通して制御されていると考えられる遺伝子群および個々のHD-ZIPⅢ遺伝子に制御されていると考えられる遺伝子群を見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
5つあるHD-ZIPⅢ遺伝子のうち3つの遺伝子について過剰発現させた際の遺伝子発現変動の解析ができたため、おおよそ計画通りに研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度の研究により選抜した標的遺伝子群がHD-ZIP Ⅲ遺伝子により制御されていることを、Chromatin Immunoprecipitation-PCRやHD-ZIPⅢ変異体での発現レベルを調べるなどの方法により証明する。また、発生のどの過程において標的遺伝子がHD-ZIPⅢに制御されているかを明らかにするために、標的遺伝子の発現解析を野生型およびHD-ZIPⅢ変異体背景で行う。 HD-ZIPⅢにより制御される遺伝子群の内、HD-ZIPⅢ遺伝子群により冗長的に制御されている遺伝子は、HD-ZIPⅢ機能の中心を担う遺伝子であると考えられる。そこで、これらの遺伝子の機能解析を進める。また一方で、特定のHD-ZIPⅢにのみ制御されている遺伝子は、個々のHD-ZIPⅢ遺伝子機能の特徴を示す遺伝子であると考えられるため、これらの遺伝子についても機能を明らかにするための解析を進める。
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Causes of Carryover |
5つのあるHD-ZIPⅢ遺伝子のうち3つの遺伝子については今年度解析を進めることができた。しかし、残りの2つについては形質転換培養細胞株の作成に失敗し解析を進めることができなかった。そのために次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在、残りの2つの遺伝子についても形質転換培養細胞株の作成を試みており、でき次第遺伝子発現変動の解析を行う予定である。その際の費用とする。
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