2015 Fiscal Year Research-status Report
DNAメチル化の下流で発現制御に関与する新規因子群の同定と解析
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15K07100
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Research Institution | Nagaoka University of Technology |
Principal Investigator |
西村 泰介 長岡技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10378581)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 遺伝子サイレンシング / DNAメチル化 / シロイヌナズナ |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAメチル化は遺伝子発現に深く関与することが知られているが、DNAメチル化がどのような分子機構で遺伝子発現に作用するのかは、ほとんど理解されていない。本研究課題では、DNAメチル化の下流作用因子の候補であるシロイヌナズナMOM1の機能解析を足がかりに、DNAメチル化が何に作用することで遺伝子発現を制御するかを明らかにすることを目指している。 本年度はMOM1の機能欠失変異体の表現型を抑圧する変異体smom (suppressor of mom1) のうち、smom2、smom6、smom8変異体の連鎖解析による原因遺伝子座の同定を試みた。smom2の原因遺伝子座はMOM1遺伝子座と強く連鎖したため、smom2変異体でMOM1遺伝子の発現量を解析したところ、わずかであるが野生型より発現が上昇していた。このことからsmom2変異はmom1変異体でMOM1遺伝子内に挿入したT-DNA内に生じ、MOM1遺伝子の3’側の機能ドメインをコードする領域の発現を導いた結果、表現型を抑圧した可能性が考えられた。一方で、smom6とsmom8変異体においては、表現型を引き起こす原因となる塩基置換を、少数個まで絞り込むことができた。来年度はこれらの候補をそれぞれ検証することで、原因遺伝子が同定されると期待できる。また新たな抑圧変異体としてsmom12の解析を進めた結果、この変異は安定に次世代に遺伝し、劣性1遺伝子座に由来することが明らかになった。 またMOM1タンパク質に物理的に相互作用するタンパク質として、SUMO E4リガーゼであるPIAL1とPIAL2を得ることに成功していたが、これらの機能欠失突然変異体を確立して解析した結果、mom1変異体と同様の表現型を示し、PIAL1とPIAL2はMOM1と同様にDNAメチル化の下流で作用する候補因子であることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
smom2変異体はMOM1遺伝子自体に生じた可能性が高くなったが、smom6とsmom8変異体は順調に連鎖解析が進み、次世代シーケンサーによるゲノム解析から得られた候補となる原因遺伝子変異も少数に絞られている。また新たに遺伝解析可能な抑圧変異体としてsmom12も得られ、MOM1相互作用因子であるPIAL1、PIAL2もDNAメチル化の下流で作用する候補因子であることが示されるなど、当初は計画に入ってはいなかったが、本研究課題の目的遂行に大きく貢献する制御因子が得られている。このことから、次年度以降、多方面から解析が進むことが期待できる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は研究実施計画通り、smom6とsmom8変異体の原因遺伝子の同定と機能解析を進める。また新たに解析対象となったsmom12変異体の原因遺伝子の同定も行う。PIAL1とPIAL2の解析からDNAメチル化の下流でSUMO E4リガーゼ活性が重要な働きをする可能性が示唆されたが、具体的にどのように作用するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初は同定された遺伝子の機能解析を行うために、多額の経費を計上していたが、最初に解析を集中したsmom2変異体の原因遺伝子が新規因子でない可能性が高まったため、smom2変異体の解析のために購入した試薬類を用いて、他の突然変異体の原因遺伝子の同定に注力することにより、経費を抑えることができた。これらの予定使用額を次年度に繰り越し、他の突然変異体の原因遺伝子の機能解析や、新たに解析対象となったsmom12変異体やPIAL1、PIAL2タンパク質の解析に使用する方が、効率的に成果が得られると判断した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
初年度は遺伝解析が中心であったが、次年度はSMOM6、SMOM8、SMOM12遺伝子やその産物であるタンパク質、またすでに同定済みのSMOM3タンパク質やPIAL1、PIAL2タンパク質の分子レベル、細胞レベルでの機能解析を行う。そのために必要な蛍光顕微鏡などの機器や試薬の購入のために主に使用する。
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