2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07107
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
加藤 晃 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教 (80283935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 翻訳制御 / 環境ストレス / 植物培養細胞 / ゲノムワイド解析 / 5’UTR |
Outline of Annual Research Achievements |
植物は環境ストレス(熱、塩等)に曝されると細胞内の翻訳状態が劇的に変化し、多くのmRNAからの翻訳が抑制される中で一部mRNAからの翻訳は維持される。先行研究において、熱と塩ストレスによる翻訳状態変化をゲノムスケールで比較することで、両ストレス下での全mRNAの翻訳挙動は非常に類似しているが、熱では維持されるが塩では抑制されるなどストレス間で翻訳状態変化が異なるmRNAの存在も認められた。本研究では、これらmRNAに着目し、特にストレスの種類に特異的な翻訳制御に関わる5’UTRの配列特徴を明らかにすることを目的とした。植物遺伝子には、場合によっては複数の転写開始点が存在していることが知られている。本研究では5’UTRの配列に着目することから、シロイヌナズナ培養細胞T-87の培養3日目コントロール(Control)、37℃熱ストレス条件下(37℃, 10 min)、NaCl 200 mM塩ストレス条件下(200 mM, 10 min)の細胞から抽出した全RNAからCAGEライブラリーを作製し、シークエンス解析を行うことで、全mRNAについて5’末端の配列情報(5’UTR配列情報)の取得を行った。その結果、熱抑制/塩維持、熱維持/塩抑制されるmRNAの中で、転写開始点が収束していて転写開始点が各条件で変化しない2種(At1g09970, At5g13180)と各条件で転写開始点が変化していた6種(At1g16030, At1g53540, At3g08970, At1g70300, At2g46240, At5g37340)をストレス種特異的な翻訳挙動を示すmRNAとして選び、それぞれの5’UTRを解析候補として選抜した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナ培養細胞の通常条件、熱ストレス条件、塩ストレス条件から抽出したmRNAについて5’末端の配列情報(5’UTR配列情報)の取得が終了した。また、その結果に基づき、ストレス種特異的な翻訳挙動を示すmRNAの5’UTRについて解析候補として選抜を終え、当初の予定どおり研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
残念ながら現時点では、塩ストレス条件下での一過性発現実験の実験系が確立できていない。そのため、計画の一部を変更し、転写開始点が各条件で変化しない2種のmRNAの5’UTRについては、直接安定形質転換体を作出し、実際の細胞内環境でその5’UTRがストレス種特異的な翻訳能力を発揮することを実証する。また、各条件で転写開始点が変化していた6種については、計画どおり転写開始点変化の前後に相当する5’UTRを連結したレポーターF-LUC mRNAをin vitroで合成し、シロイヌナズナプロトプラストへ導入する一過性発現実験を行い、熱ストレス条件だけではあるが、各5’UTRが持つ翻訳能力をレポーター活性として評価する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた一過性発現実験の一部を次年度実施分とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度実施予定分と28年度実施計画分を合わせて一過性発現実験を行なう物品費として使用する。
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