2015 Fiscal Year Research-status Report
シロイヌナズナ胚軸をもちいた2次成長の分子生物学的研究
Project/Area Number |
15K07108
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
田坂 昌生 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 教授 (90179680)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 2次成長 / シロイヌナズナ / 胚軸 / 維管束 / 周皮 / コルク層 |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナの胚軸二次成長の分子機構について、本年度次の研究成果を得た。 1)胚軸二次成長の詳細観察:二次成長過程では、維管束領域の拡大と周皮形成の二つの事象が並行して起こる。周皮形成に関する知見は少ないので、周皮を構成する細胞層の一つで二次壁をもつコルク層に着目し、内鞘細胞から1層のコルク層が形成される過程を細胞レベルで詳細に観察した。その結果、コルク細胞の形成は一次篩部側の内鞘細胞の分裂により開始し、その後一次木部側へと進行することを明らかにした。また、内鞘細胞とそれ由来の細胞の分裂活性や微細構造の解析により、周皮を構成する細胞の特徴付けを行った。 2)トランスクリプトーム解析:胚軸二次成長過程の分子基盤を明らかにする目的で、1)の詳細観察を基に細分化した胚軸二次成長過程の経時的なマイクロアレイ解析を行い、それぞれのステージで発現が変動する遺伝子群を網羅的に探索した。得られたデータを相互比較解析し、各ステージの分子マーカー候補や幹細胞の維持に関わる転写因子(WOX)など二次成長の制御に関わる可能性のある転写因子を選抜することができた。 3)二次成長異常変異体の単離と解析:木部領域の拡大に異常を示すer erl1二重変異体を変異原処理し、胚軸二次成長に異常を示す新奇変異株の取得を進めている。本年度は、さらなる候補株の取得を行い、M2世代で新たに13系統の変異体候補を見出した。そして、既に得られている候補株(#5-1、#19-3)の中で、維管束形成層形成不全を示す#19-3でみられる表現型がオーキシン応答関連因子BDLの機能獲得型変異体でも見られることを発見し、胚軸二次成長過程における内鞘細胞の分裂活性制御にオーキシンが関与していることや#19-3の原因遺伝子がオーキシン関連遺伝子である可能性を強く示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)シロイヌナズナ胚軸の2次成長過程を詳細に観察する事で、時・空間的な発生現象を明らかにし、特に内鞘細胞から、周皮が形成される過程を始めて明確に示し、今後の研究の基礎を確立した。 2)既に明らかにしていた維管束系の確立の状況と、今回の1)の成果を基に胚軸の2次成長で発生が進行する重要な時期を決め、それに対応して幾つかの時間的ポイントで胚軸全体に対するトランスクリプトームを行い、発現プロファイリングのデータを取得した。そして、それを基に多数の発現変化の大きな遺伝子を同定した。その中には、多数の転写因子も含まれており、今後の研究の基礎が確立できた。 3)胚軸の2次成長に異常を示す多数の変異株の取得を行っており、その幾つかに関して分子遺伝学的、細胞生物学的解析が進んでおり、今後飛躍的な成果が得られる可能性が高い。
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Strategy for Future Research Activity |
1)二次成長に関する新規マーカー分子の同定:マイクロアレイ解析から選抜した分子マーカー候補遺伝子について、promoter::GUS ラインなどを用いて胚軸二次成長過程での発現解析を行い、分子マーカーとして利用しうるかどうか検証する。とくに、内鞘細胞やそれに由来する細胞で発現する遺伝子に着目し、周皮形成に関連する分子マーカーの取得を目指す。また、内鞘や周皮で発現する転写因子に関しては、ノックアウト変異体や過剰発現体を用いた機能解析も同時に進め、周皮形成を担う側方分裂組織(コルク形成層)の形成・維持や内鞘細胞からの維管束形成層の形成といった二次成長を司る2種類の側方分裂組織の形成・維持に関与する鍵因子の同定を目指す。 2)二次成長過程の細分化:野生型の胚軸において、コルク層が1層完成した後、2層目のコルク層が形成されるまでの過程を細胞分裂活性や微細構造の変化に着目して詳細に観察する。さらに、本研究で取得した分子マーカーと細胞分裂マーカーを同時に可視化することで、胚軸二次成長における側方分裂組織の形成や幹細胞としての機能発現の過程をより詳細に明らかにする。 3)二次成長異常変異体の単離と解析:コルク層多層化変異体#5-1及び維管束形成層形成不全変異体#19-3に関しては、ラフマッピングと次世代シーケンサーを用いたSNP解析により、原因遺伝子の同定を行う。そして、#5-1や#19-3の原因遺伝子に関して、発現解析や機能解析を進め、これらの遺伝子の機能の解明を行う。また、昨年度取得した変異体候補については、M3世代にて表現型の再現性を確認し、原因遺伝子特定に向けた準備を進める。現在までに、本スクリーニングでは、周皮形成関連変異体をはじめ、これまでに報告のない興味深い変異体が単離されていることから、本年度もスクリーニングを継続し、新たな変異体候補の取得に努める。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Transcriptional regulation of PIN genes by FOUR LIPS and MYB88 during Arabidopsis root gravitropism2015
Author(s)
Hong-Zhe Wang, Ke-Zhen Yang, Jun-Jie Zou, Ling-Ling Zhu, Zi Dian Xie, Miyo Terao Morita, Masao Tasaka, Jiri Friml, Erich Grotewold, Tom Beeckman, Steffen Vanneste, Fred Sack,z & Jie Le
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Journal Title
Nature Communication
Volume: 6
Pages: 1~9
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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