2016 Fiscal Year Research-status Report
植物生殖器官の発達に関わる細胞内小胞輸送因子の機能解析
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15K07109
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
中川 強 島根大学, 総合科学研究支援センター, 教授 (30202211)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花粉 / シロイヌナズナ / 小胞輸送因子 / 生殖器官 |
Outline of Annual Research Achievements |
生殖器官の形成は生物種の存続に必須な重要イベントである。申請者は植物の生殖器官形成の分子メカニズムをあきらかにするため、モデル植物であるシロイニナズナの稔性低下変異体(種子ができず、さやが大きくならない)の探索を行い、花粉表層の構造が異常となり稔性が低下する新規変異体を見出した。さらに同変異の原因遺伝子として、小胞体からの小胞出芽に働くSec31のホモログ(AtSec31A)を同定し、細胞内小胞輸送が花粉形成に深く関わっていることを示した。花粉の発達において葯内のタペート細胞は花粉表面成分を供給する重要な役割を果たしている。Sec31ホモログはタペート細胞で強く発現しており、タペート細胞が花粉表層物質を分泌する際の輸送に働くことが推察された。小胞体からの小胞出芽には、Sec31と共にSec13、Sec23、Sec24タンパク質が働くことが知られている。Sec31はSec13と複合体を形成し、Sec23とSec24の複合体を架橋することで小胞が形成される。を形成申請者らはまずSec24ホモログに着目し、3種類のシロイニナズナホモログ(AtSec24A、AtSec24B、AtSec24C)のAtSec24B変異体で花粉発芽率が低下し、AtSec24Bと24Cの二重破壊で雌雄それぞれの配偶体の発達が途中で停止することを明らかにした。次いでSec23ホモログの研究に着手した。シロイヌナズナにはSec23ホモログが7種(AtSec23A, 23B, 23C, 23D, 23E, 23F, 23G)存在しているが、AtSec23Fと23Gの二重破壊で花粉の表層構造が顕著に異常になることを見出した。これはAtSec31A変異の表現型と類似しており、花粉形成に必要な何らかの因子の輸送がAtSec31A、AtSec23F、AtSec23Gの働きに依存していることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
シロイヌナズナに存在する7種のAtSec23ホモログについて、数多くの二重破壊の組み合わせを作製し、明瞭な花粉表現型を示す組み合わせを見出すことができた。この二重破壊株について、透過型電子顕微鏡により花粉発達の詳細な観察を行い、異常が生じる時期を特定することができた。またそれぞれの単独破壊株の花粉を詳細に観察し直したところ、表層構造のわずかな異常(網目構造が粗くなる)が認められた。このことより単独の変異でも花粉発達に影響が出ていると考え花粉発芽試験を行ったところ、一方の単独変異では花粉管発芽率に低下が認められた。AtSec23FとAtSec23Gは冗長的に花粉発達に重要は鱈期を持っており、さらに独特の機構で花粉表層網目構造の完成、花粉管発芽を正常に進めるための機能を持つことが推察された。 さらに申請者は、走査型顕微鏡により花粉の構造が異常となる変異体のスクリーニングを行い、花粉表面の網目構造が粗くなる変異体、網目構造がなくなる変異体、網目構造の掘りが浅くなる変異体などを多数単離した。これらについて次世代シークエンサーによる解析を行ったところ、機能未知のトランスポーター、膜受容体遺伝子が原因遺伝子として浮かびあがってきた。AtSec23Fと23Gはこれらトランスポーターや膜受容体の輸送に関わっていることも推察され、花粉形成における小胞輸送の重要な機能を解明する鍵になると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
走査型電子顕微鏡スクリーニングによって得られた花粉構造変異体について、次世代シークエンサー解析で見出された候補遺伝子が正しい原因遺伝子であるか、相補実験などにより確認を行う。その後、これら原因遺伝子にコードされるタンパク質について、AtSec31A破壊株やAtSec23F&G二重破壊株での細胞内局在や蓄積を調べ、花粉構造形成におよぼす影響との関連を明らかにする。特に花粉形成で重要な役割を持っている葯内のタペート細胞における局在や蓄積の解析を行う。また、AtSec23FやGと候補遺伝子タンパク質との相互作用解析も行う。今までの次世代シークエンサー解析により、候補遺伝子として機能未知のトランスポーターや膜受容体が得られている。トランスポーターについては、輸送物質の同定を試み、花粉表層の成分であるスポロポレニンを輸送しているか検証を行う。膜受容体については、何らかの信号分子を受容していると考えられるため、信号物質の探索を進める。候補遺伝子の中には花粉表層成分の合成に関わると予想される酵素の遺伝子も含まれていた。これら酵素についても局在・蓄積がAtSec31A破壊株やAtSec23F&23G破壊株でどのようになっているか、解析を行う。 以上の研究により、花粉形成において小胞輸送によりどのような因子が輸送されることが必要か調べ、花粉形成の分子メカニズム解明を進める。
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Remarks |
研究を遂行するために開発を行ってきた植物用ベクターリソースの情報を掲載。
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