2016 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞化における細胞運命転換を制御するCDKAの標的因子の探索
Project/Area Number |
15K07119
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Research Institution | National Institute for Basic Biology |
Principal Investigator |
石川 雅樹 基礎生物学研究所, 生物進化研究部門, 助教 (00586894)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 幹細胞化 / CDKA / ヒメツリガネゴケ |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒメツリガネゴケの細胞周期制御因子CDKAによる細胞運命転換の制御機構を明らかにするため、本年度では以下の実験を行った。 1. CDKA標的因子の探索:(a)ヒメツリガネゴケの茎葉体を用いて、リン酸化タンパク質を抽出する条件を確立した。(b) CDKAは切断後24時間目で十分に活性化されることから、野生型とCDKA遺伝子欠失株の24時間目の切断葉から、(a)で確立した条件を用いてリン酸化タンパク質の抽出を行った。(c) CDKAの標的因子は、幹細胞化の過程でCDKAと結合することが考えられた。また、所属機関において超高分解能フーリエ変換型質量分析装置が利用できるようになったため、当初の研究計画になかったが、幹細胞化の過程にあるCDKA複合体に含まれているタンパク質を特定する実験を計画した。そこで、Myc抗体を用いた免疫沈降ができるように、CDKAにMycタグを融合させたCDKA-Mycタンパク質を発現する形質転換体を作製し、その形質転換体の切断葉からタンパク質を抽出し、Myc抗体を用いた免疫沈降法によりCDKA-Myc複合体を回収し、複合体に含まれているタンパク質を質量分析装置で解析した。 2. CDKAキナーゼ活性を検出するバイオセンサーの開発:バイオセンサーのレポーター遺伝子を、ホタルのルシフェラーゼから、発光強度がホタルルシフェラーゼよりも80から240倍強いウミシイタケのNanoLucに変更したコンストラクトを作製し、ヒメツリガネゴケの野生型とCDKA遺伝子欠失株に導入した。それぞれの原糸体での発光強度をルミノメーターで調べたところ、ホタルルシフェラーゼを用いたコンストラクトに比べて、発光強度が10倍程度強いことが分かった。しかしながら、CDKA遺伝子欠失株でも強い発光が観察されたため、コンストラクトの改良を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
リン酸化タンパク質の抽出条件が確立し、野生型およびCDKA遺伝子欠失株を用いて網羅的にリン酸化タンパク質を解析できる段階に到達することができた。また当初の研究計画になかった免疫沈降法による標的因子の探索が順調に進んでいる。CDKA活性をモニターするバイオセンサーは、発光強度の高いNanoLucを用いることで、細胞レベルでの観察可能なセンサーを開発することが可能になったと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に引き続き、石川が研究全体を統括するとともに実験を進める。 (1) CDKA標的タンパク質の同定:抽出したリン酸化タンパク質を質量分析装置で解析し、CDKAの標的因子の候補を探索する。また、CDKA複合体に含まれているタンパク質もCDKA標的因子の候補となりうるので、これらの因子について、in vitroキナーゼアッセイにより候補因子を絞り込み、遺伝子欠失株を作成し幹細胞化におけるCDKAとの関係を調べる。 (2) CDKAバイオセンサーの開発:NanoLucを用いることで、十分な発光強度を得られることがわかったので、コンストラクトのリンカー配列の長さやアミノ酸配列の変更、ドメイン配列の順番を変えたコンストラクトを作成し、ヒメツリガネゴケの野生型、cdka遺伝子欠失株に導入し、検証する。また(1)で同定されることが期待されるタンパク質のCDKAリン酸化部位を含む20アミノ酸残基程度を用いたコンストラクトも作成し評価する。
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Causes of Carryover |
バイオセンサーを用いて、原糸体、さらには細胞レベルでのCDKA活性を調べる予定であったが、NanoLucを使用したバイオセンサーの改良が必要になり、さらなる条件検討を行う必要性が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
CDKAバイオセンサー開発、および標的タンパク質をコードする遺伝子の機能解析のための分子生物学的実験用試薬購入費として使用する。
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