2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K07137
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
中村 正久 早稲田大学, 理工学術院総合研究所(理工学研究所), その他(招聘研究員) (40130025)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | AR遺伝子 / 性決定 / 遺伝子改変 / 転写調節領域 / 生殖細胞 / 体細胞 / 性転換 / 転写調節因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
一般的に脊椎動物の性は受精時の性染色体の組み合せ遺伝的に決まる。性決定様式には雄へテロXX/XY型と雌へテロZZ/ZW型の2型があり、Y 或は W 染色体の性決定遺伝子が性を決める。ところが、雌雄の性が決まっても、個体にステロイドホルモンを投与すると性が転換する。この事実は、ステロイドホルモンとその受容体が動物の性を決めることを示している。日本に棲息する両生類のツチガエルはミトコンドリアの12S及び16S遺伝子の塩基配列に基づいた分子系統樹と性関連DNAマーカーによって、East, West, North, Central及び West-Centralの5集団に分けられる。East, West及びCentralの3集団がXY型、North集団はZW型である。我々は、ツチガエルのAR遺伝子は性染色体(X,Y,Z,W)にあること、W染色体のAR遺伝子(W-AR)の転写調節領域の塩基配列には多くの変異があり、それによって殆ど発現せず、雄(ZZ):雌(ZW)の発現比が2:1になることを示した。そこで我々は2つの研究計画を立てた。それは、(1)ツチガエルにアンドロゲン受容体(AR)遺伝子を導入したZ-AR導入雌(ZW)ツチガエル及びAR遺伝子をノックアウトした雄(ZZ)AR遺伝子欠損ツチガエルを作製してアンドロゲンとアンドロゲン受容体(AR)遺伝子がツチガエルの性決定因子であることを実証すること、及び (2) AR遺伝子の発現調節に関わる転写候補因子を見出すこと、である。(1)については、上智大・安増教授との共同研究でCRISPR/CAS9法によるAR遺伝子ノックダウンガエルを作製すると性が転換することを見出した。(2)に関しては、W-ARは殆ど発現しないため、転写調節領域の塩基配列に生じた変異による可能性が高いと考え、国内で多くの個体を集め、それらの塩基配列を解析している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的(1)については、AR遺伝子の導入及び改変ツチガエルを作製した。ツチガエルはモデル動物ではなく野生種のため、研究開始当初は分子遺伝学的背景が乏しかったが、多くの方々に助けていただき、AR遺伝子の導入及び改変ツチガエルを作製することが出来た。 Z-AR遺伝子の導入雌ガエルは卵巣ではなく、卵精巣を形成した。Z-AR遺伝子の導入雌幼生を低量のアンドロゲン含水で飼育すると雄個体と同じ精巣を形成した。一方、Z-AR遺伝子ノックダウン雌ガエルを作製した。雌幼生を0.2ng/ml以上のアンドロゲン含水で飼育すると雄個体と同様に精巣を形成するが、0.2ng/ml以下の濃度で飼育すると性転換せず、卵巣を形成する。ところが0.2ng/ml以上のアンドロゲン含水でZ-AR遺伝子ノックダウン雌ガエルを飼育しても精巣を形成せず、生殖腺は卵巣のままであった。この結果は、ツチガエルの性決定因子がアンドロゲンとその受容体であることを示している。アンドロゲンとその受容体が脊椎動物の性決定因子になりうることを世界で初めて示した。研究目的(2)は、 AR遺伝子の転写候補因子を見出すことである。全国97ヶ所に棲息するするツチガエルを採集してX,Y,Z,W 染色体にあるAR遺伝子の転写領域の塩基配列を解析した。その結果、候補因子を見つけるにはさらに採集箇所を増やす必要があることがわかった。そこで、研究期間延長を申請したところ、承認されたので最終年度にできるだけ多くの箇所でカエルを採集し、AR遺伝子の転写領域の塩基配列を解析して候補因子を見つける予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2つの研究目的のうち、(1)ツチガエルの性決定因子がアンドロゲンとアンドロゲン受容体(AR)遺伝子がツチガエルの性決定因子であることを実証すること、については、AR遺伝子のノックイン及びノックダウンツチガエルを作製して実証し、国際英文誌には票した。(2) AR遺伝子の発現調節に関わる転写候補因子を見出すこと、については、AR遺伝子の転写調節領域の塩基配列の解析には不十分であることが判明したので研究期間延長を申請したところ承認を得た。最終年度は、できるだけ多くの採集場所に行き、カエルを採集してAR遺伝子の転写調節領域の塩基配列の解析を行う予定である。得られた配列を転写調節検索ソフトを用いて候補因子を見つける。このための研究方法は既に確立しているので方法に関しては問題がない。
|
Causes of Carryover |
研究目的のAR遺伝子の転写調節候補因子の探索は、解析するカエルの採集箇所が不十分であることが判明した。しかし、野生種のカエルは10月から5月初旬まで冬眠で採集ができない。そこで冬眠が開ける時期に採集をするため、次年度の使用額が発生した。
|
-
[Journal Article] Origin of sex chromosomes in six groups of Rana rugosa frogs inferred from a sex-linked DNA marker2017
Author(s)
Oike A, Watanabe K, Min MS, Tojo K, Kumagai M, Kimoto Y, Yamashiro T, Matsuo T, Kodama M, Nakamura Y, Notsu M, Tochimoto T, Fujita H, Ota M, Ito E, Yasumasu S, Nakamura M.
-
Journal Title
J Exp Zool A Ecol Integr Physiol
Volume: 327
Pages: 444-452
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
-
-