2016 Fiscal Year Research-status Report
単一ケニオン細胞に対する古典的条件付けとその成立に関する分子基盤の解明
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15K07145
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
吉野 正巳 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (20175681)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | フタホシコオロギ / ケニオン細胞 / 古典的条件付け / イオンチャンル / パッチクランプ / 条件刺激 / 無条件刺激 / アセチルコリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的:単一分離神経細胞に対して古典的条件付けは成立するか?
結果:フタホシコオロギのキノコ体から酵素処理で単離した大型ケニオン細胞に対し、条件刺激(CS)であるアセチルコリン(ACh)、無条件刺激(US)であるオクトパミン(OA)を微小ピペットで1秒間圧力注入し、Na活性化Kチャネルに対するCS, US 単独の作用、及びCS-US対刺激の作用を調べた。 その結果、1回の条件付け刺激後、Na活性化Kチャネルの活動に対するCS(ACh)の作用効果は見られなかった。しかしながら、複数回のCS-US対刺激の後、Na活性化KチャネルのCS(ACh)に対する感受性に変化が見られることがわかった。この変化は、CS-USを逆にしUS-CSにすると見られなくなった。さらに、この変化は、IP3受容体阻害剤2-APB、一酸化窒素合成酵素阻害剤L-NAME、プロテインカイネースG抑制剤 KT5823、プロテインカイネースA抑制剤 H-89存在下でも消失した。 以上の結果は、酵素で単離した単一のニューロンにおいて、複数回の条件付け刺激後、単一のチャネルタンパク質のアセチルコリンに対する感受性が変化し得ることを明らかにし、単一ニューロンに対し、人為操作によって学習訓練を施すことができる可能性を示唆した。さらにこの学習成立には、アセチルコリン/ムスカリン受容体/IP3受容体/一酸化窒素合成酵素/一酸化窒素/cGMP/PKGシグナル伝達系とオクトパミン受容体/アデニル酸シクラーゼ/cAMP/PKAシグナル伝達系間のクロストークが、関与している可能性を示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目指す「単一分離神経細胞に対する古典的条件付け」の実験システムを構築することができた。この装置を用い、条件刺激と無条件刺激を対にして単一細胞に与え、Na活性化Kチャネルの活動状態を指標に効果を調べた。その結果、Na活性化Kチャネルの条件刺激すなわちアセチルコリンに対する感受性が変容することが明らかにされた。この結果は単一細胞に対して学習訓練が成立する可能性を示唆し、本研究の主要テーマに関する仮説を支持するものであった。このことから、(2)の評価が妥当と考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、複数回の条件刺激と無条件刺激を対にして単一細胞に与え、Na活性化Kチャネルのアセチルコリンに対する感受性が変容することが明らかにされた。これまで、学習の成立を評価する指標にNa活性化Kチャネルの活動を用いたが、膜の興奮性に関わる持続性Naチャネル、一過性Naチャネル、Ca活性化Kチャネル、Caチャネルなどについて調べる必要がある。最も端的に単一細胞の学習成立を明確にするため、学習訓練後の活動電位発生能力について、明らかにしたい。 さらに、複数回の条件付け後のアセチルコリン感受性変化がニコチン性アセチルコリン受容体の感度上昇によるものかを確認する。そのため、単離細胞にホールセルパッチクランプ法を適用し、複数回の条件付け後、アセチルコリン誘発性電流が増大するか否かを決定する。
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Research Products
(3 results)