2017 Fiscal Year Research-status Report
分裂酵母ミトコンドリアDNA結合タンパク質の機能解析と進化的考察
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15K07168
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
宮川 勇 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (50136165)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分裂酵母 / ミトコンドリア / ミトコンドリア核様体 / Cmb1 / Abf2p / ミトコンドリアゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母S. cerevisiaeのAbf2p欠損株では,37℃での高温培養において顕著なミトコンドリア核様体数の減少がおこる。また,30℃での培養でエチジウムブロミド処理に対して高い感受性を示し呼吸能を失う。平成29年度は,当初計画したようにCmb1タンパク質の全長だけでなく,Cmb1タンパク質のN末端側半分とC末端側半分を別々にS. cerevisiae Abf2p欠損株で発現させて,Abf2p欠損株が示すミトコンドリアDNA (mtDNA)の不安定性を相補するかを調べた。 その結果,Cmb1タンパク質の全長を発現させた場合は,高温でのミトコンドリア核様体の減少とエチジウムブロミド感受性の両方を相補することができるのに対して,Cmb1タンパク質のN末端側半分とC末端側半分を別々に発現させた場合は,高温でのミトコンドリア核様体の減少だけを相補することができることが分かった。この性質は,出芽酵母S. cerevisiaeのミトコンドリアDNA結合タンパク質Abf2pの性質とは異なることから,Cmb1はS. cerevisiaeにおいてはAbf2pとは異なる機能をもつことが分かった。 分裂酵母Schizosaccharomyces属の4種の酵母のうち,新たな分裂酵母としてS. japonicusを研究材料に選び,生活環におけるミトコンドリアとミトコンドリア核様体の形態を明らかにした。また,S. japonicusは,S. pombeに比べてミトコンドリア核様体の観察が非常に容易であることを明らかにした。そして,S. japonicusからのミトコンドリア核様体の単離方法を検討した結果,単離ミトコンドリア核様体から新規なmtDNA結合タンパク質を発見することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度の予定として計画したように,出芽酵母S. cerevisiaeのAbf2p欠損株を用いて,Cmb1タンパク質の全長だけでなく,Cmb1タンパク質のN末端側半分とC末端側半分の遺伝子配列を別々にプラスミドに組み込んで,S. cerevisiae Abf2p欠損株で発現させて,ミトコンドリアDNA (mtDNA)の不安定性を相補するかを調べた。その結果,Cmb1のN末端側とC末端側は単独ではS. cerevisiae Abf2p欠損の性質を相補せず,この性質はS. cerevisiaeのAbf2pの機能とは異なることを明らかにできた。また,新たな分裂酵母としてS. japonicusから新規なmtDNA結合タンパク質を発見することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究からS.pombeのCmb1の欠損は,S. pombe細胞においてミトコンドリア核様体の凝集以外には,呼吸活性,成長速度,ミトコンドリア遺伝子の転写において,野生株と大きな差はなく,細胞に顕著な障害をもたらさないことが分かってきた。このことから,S. pombe自体を用いてCmb1の機能解析ができるかどうかについて,再検討する必要がある。そこで,引き続き,出芽酵母S. cerevisiae Abf2p欠損株を用いて,Cmb1タンパク質の機能を解析する。 また,29年度の研究で,S. japonicusのmtDNA結合タンパク質を新規に同定することに成功した。平成30年度は,もうひとつの分裂酵母であるS. octosporusを実験材料としてとりあげ,mtDNA結合タンパク質の同定を進める。
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Causes of Carryover |
平成28年度からの次年度繰り越し額があり,平成29年度には現有装置の故障等の費用がかからず校費を使用することもできたため,次年度使用額が生じた。次年度使用額は,酵素,薬品,ガラス器具などの物品費,旅費,論文投稿料,英文校正料などの経費として使用する予定である。
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Research Products
(9 results)