2015 Fiscal Year Research-status Report
グリーンヒドラ共生系における動物-藻類-細菌間相互作用とゲノム進化
Project/Area Number |
15K07173
|
Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
濱田 麻友子 沖縄科学技術大学院大学, マリンゲノミックスユニット, 研究員 (40378584)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 共生 / ゲノム / 進化 / ヒドラ / クロレラ |
Outline of Annual Research Achievements |
グリーンヒドラは特定の緑藻類クロレラを体内に共生させており、これまでにホスト・共生藻間の相互作用に関して多くの生理学的研究がなされてきた。我々はグリーンヒドラを動物―藻類の共生モデルシステムとし、マイクロアレイ解析やゲノム解析などのゲノム科学的視点からヒドラークロレラ間の協調的な栄養のやりとりや、共生クロレラにおける硝酸同化遺伝子の欠失などを明らかにしてきた。本研究ではさらにヒドラ側のゲノム解析を行い、ホスト・共生体両方の情報から動物―藻類共生システムの理解を深めることを目的としている。それに加え、この共生システムへの共生細菌の関与を明らかにすることで、動物―藻類―細菌共生コミュニティにおける分子相互作用と、ゲノム進化を明らかにすることを目指している。 平成27年度はグリーンヒドラのゲノム解析と、グリーンヒドラと共生クロレラの遺伝子モデルの構築を行った。グリーンヒドラゲノムに関しては、Illumina MiseqとHiseqを用いたシークエンシングとNewblerなどによるアセンブルの結果、N50 = 1.1Mの非常に長いScaffoldを得ることができた。ゲノムサイズは約320Mbでこれまでにフローサイトメトリーで予測されていたものとほぼ同等であった。これは非共生性の別種のヒドラのゲノムサイズと比較して非常にコンパクトである。また、グリーンヒドラのmRNA-seqを行いTrinityなどを用いたアセンブル、Augustusなどによる遺伝子予測を行い、約3万の遺伝子モデルを得た。共生クロレラについてもmRNA-seqを行い、約8000遺伝子モデルを得た。また、作成したグリーンヒドラと共生クロレラの遺伝子モデルに関して、非共生性の別種のヒドラ、クロレラなど他の生物の遺伝子と比較してアノテーションをつけた。また、重複や欠損を起こした遺伝子や、細菌などの他の生物からの水平伝播遺伝子の候補リストを作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は当初の予定通り、グリーンヒドラと共生クロレラ両方のゲノム・トランスクリプトームのシークエンシング、アセンブル、遺伝子モデルの作成を終えた。また、その遺伝子情報を用いて比較ゲノム解析とアノテーション付けをしたことで、今後の解析の基盤を整えることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、前年度に同定したグリーンヒドラ、共生クロレラゲノムにおいて欠失や重複をおこした遺伝子および水平伝播遺伝子の候補の中から、特に光合成や代謝など共生システムに関わっていると考えられる遺伝子に着目する予定である。これまでに共生クロレラゲノム解析によって硝酸同化遺伝子の欠失が起こっていることを示したが、ホストと共生藻両方の情報が揃うことで、ヒドラークロレラ間の相互作用と共生ゲノム進化の全体像により近づくはずである。 さらにゲノムデータと実験的検証からグリーンヒドラ共生システムにおける共生細菌の関与について手がかりを得ようと考えている。まず、細胞内共生細菌の単離培養とゲノム解析、および系統解析による種の同定を試みる。単離培養が難しい場合は、グリーンヒドラ、共生クロレラのゲノムデータから相同性検索によって共生細菌由来と思われるゲノムとそれにマッピングされる遺伝子を抽出する予定である。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に購入予定であった解析用のコンピューターは、申請者が所属する沖縄科学技術大学院大学のスーパーコンピューターを使用することができたので購入を控え、申請者の所属が変わり上記のスーパーコンピューターが使用できなくなる平成28年度にそのための費用(約40万円)は持ち越すことにした。 また、グリーンヒドラのゲノム解析に使用する予定であったシークエンス用の試薬(約50万円分)については、所属研究室にてプロトコルが確立しており順調にサンプル調整とシークエンシングが成功したこと、また使用期限の関係で所属研究室が保有するストック試薬を使用したことから未使用額が発生した。その分は、未だプロトコルが確立しておらず、より多くのサンプルを作成する必要があると予想される共生細菌のゲノム・トランスクリプトーム解析に回すこととした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度はシークエンス用試薬であるIllumina 用サンプル調整キット(約20万円)、Miseqシークエンス用キット2ラン分(Miseq Reagent Kit v3 600 cycles 約30万円×2)に加え、一般試薬・消耗品として、分子生物学実験用の試薬、実験器具用のガラス製品、紙・プラスチック製品、データ保存用のディスクの購入を計画している(約50万円)。また、国内旅費として年1回の国内学会参加のための費用(約5万円)と、海外旅費として年1回の共同研究者との打ち合わせ・実験のためのドイツ渡航費用(約30万円)を計画している。また、シークエンス解析用のコンピューターの費用として約40万円を考えている。
|