2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模ゲノム配列情報解析による作物栽培化過程の解明
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15K07175
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Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
伊藤 剛 国立研究開発法人農業生物資源研究所, ゲノムインフォマティックスユニット, ユニット長 (80356469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子進化 / 分岐年代推定 / 作物栽培化 |
Outline of Annual Research Achievements |
イネにおいて、提案した通り、種分岐と祖先多型の両方を考慮したモデルを基に作成したプログラム(並列計算が可能)を用いて分岐年代および有効な集団の大きさを推定した。栽培種であるサティヴァのジャポニカの日本晴品種と、新規に次世代シーケンサーのHiSeqでゲノム解読したアフリカイネであるグラベリーマ(IRGC104038)を比較し、15~17万年前という分岐年代、11万強の集団の大きさを得た。同様に、ジャポニカの日本晴とインディカの広陸矮4号を比較したところ、この場合は最初の集団の分岐後に再度交雑があり、この交雑の時期は非常に現代に近いことが分かった。また、ダイズの栽培種(Glycine max)と野生種(ツルマメ、Glycine soja)にも本方法を適用し、分岐年代が数千年前であったことから、栽培化の歴史に関する考え方とも比較的合致し、短期間での集団の分岐や進化に対しても提案の方法が使えることを示すことができた。これらに加え、新規のゲノムシーケンシングを企図し、多様な種を解析するため、我々が食する温帯ジャポニカとは異なる熱帯ジャポニカのWRC52(ベトナム)、アフリカの野生種であるバルチーからW0698(ギニア)とW1588(カメルーン)、さらにこれまでに述べたイネの外群としてOryza longistaminataのW1449(コートジボワール)をHiSeqにて解読した。加えて、ビグナ属の野生種であるVigna exilisも解読した。これらに関しては、参照ゲノムに対してアラインメントし、比較検討を行っている。なお、塩基配列解読等は連携研究者の協力を得て行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結果を見ると方法自体は上手くいっていおり、プログラムもきちんと動作しているが、もう少し高速化は図りたい。分岐後の再度の交雑のように分岐年代推定が複数回になると、最尤推定に於いて指数関数的に計算量が増えてしまうが、回避することが困難である。それなりのデータの蓄積があり、既に論文原稿もできて投稿できそうなところまで行っているので、この点では十分な成果発信ができるものと思う。新規のゲノム配列解読では、データ取得が上手くいかず、一度やり直すことになった。連携研究者の検討によると、HiSeqでの解読に於いてリードを長めの250塩基に設定したことに起因する問題でシーケンシング反応がうまくいかなかった可能性がある。データ取得が年度末ぎりぎりになってしまったので、解析の時間が十分に取れなかった。しかし、それ以前のデータで論文化か進んだことを考えると、全体としてはプラスマイナスでゼロくらいであろうかと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に推進しているので、基本的な計画を変える必要はないと考えている。昨年度取得した新規のデータ解析に加え、イネ以外に予定していた種に於いてデータを取得し、必要であれば新規にゲノム解読を行い、研究を進めたい。ただ、コムギに関しては、国際プロジェクト等(研究代表者が関与している日本のプロジェクトも含む)での解読が遅れ気味であり、研究対象種に関してはその時の状況に応じて臨機応変に考えるようにする必要がある。
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Causes of Carryover |
ゲノム塩基配列解読を外注で行うことを考えていたが、連携研究者のシーケンサーによる解読のほうが安価でかつ大量にできそうな状況であったことから、こちらに依頼することとした。この際に購入したシーケンシング等の試薬が予想より安価であったため、差額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額においても塩基配列解読を計画しており、この中で有効活用することで、より大量のデータを得ることができる。当所想定より正確な推定値を算出することができると考えている。
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