2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模ゲノム配列情報解析による作物栽培化過程の解明
Project/Area Number |
15K07175
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
伊藤 剛 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 高度解析センター, チーム長 (80356469)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 分子進化 / 分岐年代推定 / 作物栽培化 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでは参照ゲノムが最もしっかりしており、またアジアを中心として極めて重要な作物であるイネを中心とし、ダイズを加えるなどして解析を行ってきた。その結果、本提案で考案している分岐年代と有効な集団の大きさを推定する方法は、十分に有効であることを明らかにしてきている。本年度はさらに対象生物種を広げ、まずムギ類を検討した。塩基配列解読が非常に高速かつ低価格になった現在ではあるが、それでも懸念した通り、6倍体コムギはゲノムが非常に大きく、Illumina HiSeq X Tenなどであっても十分な解読量が確保できるかどうか不安が残る。加えて、コムギゲノムの参照配列は残念ながら最終版の公開に至っていない。そこで、参照ゲノムの最終版が公開されており、2倍体であるオオムギを中心に考えることとした。栽培種を2種、それぞれで約14億リード(150 bp)を、また近縁野生種で約13億リードを得た。低クオリティ領域の除去後に5%程度のデータ量減少が見られたが、それでも塩基量で全ゲノムの30倍程度以上は得られているので、解析に十分なデータが確保できた。また、野菜や果樹も対象として検討していたところ、別途共同で行っているカンキツ類のゲノム解読のデータが使用できるので、野生種のカラタチとウンシュウミカン、ブンタンの配列比較を行うこととした。オオムギとカンキツのデータ解析については、ゲノムとのアラインメントは作成できており、分岐年代推定等を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データ取得などは順調に進んでおり、解析部分で若干遅れているものの大きな問題はない。専門的に研究を行ってきたイネ以外の作物では、それぞれの専門家に相談の上慎重にサンプルを選ぶ必要もあり、データ取得の前段階での情報収集や検討に思ったより時間がかかっている。また、主要な作物類では海外の研究機関を中心に非常に大量のデータが生産されており、自らシーケンシングを行わなくてもこういったデータを利用することを考えなければならない。ただ、論文発表されたといっても参照ゲノムの質は必ずしも高くない場合が多い。また、近縁野生種のデータの質や量もばらばらであり、こういった状況をしっかり把握したうえで研究計画を立てて推進していく必要がある。最終的には、質の良いデータを中心に選抜して、できる限り幅広い作物で本方法を適用したいと考えているし、またそれができるだけの基盤は十分に整えられたものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
おおむね順調に推進しているので、基本的な計画を変える必要はないと考えている。イネ以外にも予定していた種などを検討の上、新規のゲノムシーケンシングも行い、データを順調に取れている。今後は方法の細かい検討も行い、座位ごとの塩基置換(変異)速度のばらつきが解析の障害になるほど大きいかも検討する。また、サーバーを購入し、研究データの公開に向けた作業を行う。
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Causes of Carryover |
DNAシーケンシングは計画当初から予定していたところ、年を追うごとに格段に低価格化している。また、競争入札もあり、非常に効率的に予算を使うことができて、当初考えていたよりもはるかに安価にデータを取ることができた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
最終年度に購入しているサーバーの性能向上や、論文作成時の校閲費などに効率的に割り当て、使用していく。
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