2016 Fiscal Year Research-status Report
琉球列島の後期更新世-近代における陸生脊椎動物の個体群消滅および絶滅に関する研究
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15K07202
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
高橋 亮雄 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (50452967)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 英利 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 教授 (10201972)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 琉球列島 / 陸生脊椎動物 / 化石 / 絶滅 / 個体群消滅 / 爬虫類 / 哺乳類 / 後期更新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は研究計画に従い、宮古諸島において後期更新世の陸生脊椎動物化石の探索と、過去の調査で宮古島より発見された既存の化石標本の分類学的研究を行った。化石の探索においては、これまでに公表された化石記録のない2島で幸運にも脊椎動物骨を含む堆積物を発見することができた。既存の標本の分類学的研究においては、宮古島のピンザアブ洞穴より発見され、国内の博物館(2館)に収蔵されている標本についての検討の機会を得ることができた。この検討で、ピンザアブ洞穴産の化石のなかに、平成27年に新種記載された絶滅種ミヤコイシガメとは別種と考えられるイシガメ科の一種と、リクガメ科の絶滅種オオヤマリクガメを確認することができた。また同じ洞穴より発見され、しばしばイリオモテヤマネコ(Prionailurus bengalensis iriomotensis)との類縁性が言及されるネコ類の未公表標本についてもデータ収集を行うことができた。ネコ類の化石の分類を進めるために、台湾においてP. b. chinensisの骨格標本について検討し、昨年度のものもあわせ収集した比較データをもとにピンザアブ洞穴産のネコ類化石の分類学的位置づけについて検討したところ、化石はベンガルヤマネコ属に帰属するものの、未記載の独立した種として扱われるべき結果が得られた。これらのほか、平成27年度に奄美諸島の一島嶼ではじめて発見された脊椎動物化石含有堆積物について、化石の剖出作業を進めた。この作業は、処理を要する堆積物の量が膨大であるため完了に至っていないが、これまでに複数種からなると思われる齧歯類、有鱗爬虫類(トカゲ類)、および鳥類の化石を検出することができた。これらのうち、齧歯類化石には大型のものが含まれていた。現在、化石が発見された島嶼には大型の齧歯類は分布していないことから、今後の研究の進展が待たれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
宮古諸島の2島で新たに発見された化石含有堆積物は、沖縄県の自然公園区域に分布するため、現在、採集許可を得るための申請資料の準備を進めている。検討を行った宮古島ピンザアブ洞穴産の脊椎動物化石のうち、イシガメ科の一種に関する研究成果の一部は、日本爬虫両棲類学会において報告した。平成29年度中にはこのほかオオヤマリクガメとヤマネコ属の化石についての研究成果を論文にまとめ公表を予定している。平成28年度には、石垣島の後期更新世陸生堆積物より発見され、沖縄県立埋蔵文化センターに収蔵されているネコ化石についても閲覧の機会が得られた。予察的研究では、この標本はピンザアブ洞窟出土のネコ化石ともイリオモテヤマネコとも異なる所見が得られている。一方、当初計画していた与論島での脊椎動物化石の発掘調査と教育普及活動は、平成28年度中に実施することができなかった。同島からは、本研究課題の予備調査において、最近報告された近世のものと考えられているトカゲモドキ等有鱗爬虫類の骨格残骸のほか、未報告の齧歯類等の標本が得られている。このため、まずはこれらの分類学的研究を優先することとしたい。研究成果についての啓発活動は平成29年度の実施を試みる。また、本年度は、前年度に実施できなかったトカラ諸島南部における化石探索調査を宝島において実施した。同島では残念ながら化石は発見できなかったが、今後の小宝島における調査に期待したい。 上記のほか、3月末までに食肉類の絶滅種についての記載論文と琉球列島の第四紀カメ類相に関するレビューからなる2本の論文を投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、宮古諸島で発見された化石含有堆積物を採集するために、沖縄県および各自治体より許可を得たたうえで、採集を行い、剖出作業と分類を進める。このほか、当初の計画通り、八重山諸島の小島嶼において脊椎動物化石の探索を試みる。このなかで、可能であればこれまで脊椎動物の化石記録が全くない西表島においても探索を実施したい。化石の分類学的研究のうち、とくにネコ類の化石については、現在のところ、宮古島産の標本も石垣島産の標本もベンガルヤマネコ属に帰属すると考えているが、精度の高い比較を行うため、東南アジアだけでなく北米あるいはヨーロッパの博物館等研究機関に赴き、ヤマネコ属(Felis)のデータを充実させる必要がある。淡水生および陸生カメ類の化石については、平成28年度に多くの未公表・未検討の標本が博物館に収蔵されていることが確認できたため、これらの分類学的研究も並行して進める。これまでに本研究課題で得られた化石の剖出作業には、多くの時間と最新の注意を要するため、すべての作業を3年間で完了させることは難しいと考えられる。標本が量的・質的にある程度の水準まで剖出できた段階で、成果の公表を試み、3年間の課題研究の総括へつなげたい。
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Causes of Carryover |
当該年度に計画していた宮古諸島における化石探索調査において、多良間島の沖合に位置する水無島に渡航を計画していたが、時化の日がつづいたことと島の慣習により渡航が不適切と思われたため、断念した。また、宮古諸島の2島嶼(多良間島と伊良部島)における調査において化石を含む堆積層を発見したものの、沖縄県の自然公園区域に該当していたため、採集を行わず、その結果、輸送費を必要としなかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に生じた次年度使用額は、平成29年度に計画している宮古諸島の2島嶼での化石含有堆積物の採集において使用することを計画している。
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Remarks |
研究代表者による本研究課題に関連する業績と本研究課題で得られた業績が記載されている.
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Research Products
(8 results)