2016 Fiscal Year Research-status Report
海洋島における開花時期の表現型可塑性が促進する生態的種分化の解明
Project/Area Number |
15K07203
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
山本 節子 (鈴木節子) 国立研究開発法人森林総合研究所, 樹木分子遺伝研究領域, 主任研究員 (70456622)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 海洋島 / 種分化 / 開花フェノロジー / エコタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
海洋島である小笠原のオオバシマムラサキ(Callicarpa subpubescens)には、湿性林と乾性林に適応したエコタイプが確認されており、それらの間では開花時期にずれが生じている。本研究では海洋島の異なる生育環境に反応した開花時期のずれが生態的種分化を促進するかどうかをオオバシマムラサキの栽培実験によって検証することを目的としている。 まず、エコタイプ間での交雑率や花粉流動を定量化するために、自然条件下で受粉した種子の遺伝子型を決定した。今年度は、昨年に採取した自然交配種子を播きだし、5サイト、11-18母樹より十分な数の実生を得た。これらの実生からDNAを抽出し、マイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決定した。さらに、各エコタイプの種子を播種し、土壌水分条件を変えて栽培し、局所適応(生残、成長の違い)や表現型可塑性(葉の毛量や開花時期)が生じるかどうかを検証した。現在、湿性環境の湿性エコタイプ(WW)、湿性環境の乾性エコタイプ(WD)、乾性環境の湿性エコタイプ(DW)、乾性環境の乾性エコタイプ(DD)の4つカテゴリーで、それぞれ48実生を育成している。環境およびエコタイプで成長に差が生じつつあり、苗高はWW > DW = WD > DDの順であった。今後も成長・生残を追跡するとともに、水分環境の違いが開花時期のずれを引き起こすかどうかを確かめる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
自然条件下で受粉した種子の交雑率の推定に必要なマイクロサテライトマーカーの開発と遺伝子型の決定を行うことができた。また、土壌水分条件を変えた乾性、湿性エコタイプの栽培実験も予定通り開始することができ、成長の差をとらえることができた。さらに一部の個体ではすでに開花も確認され、研究の進捗は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、自然交配種子に関しては得られた遺伝子型データをもとに交雑率の推定だけでなく、サイト間の遺伝子流動量の推定を行う。栽培実験は引き続き継続し、成長・生残の差だけでなく、葉の毛量や開花時期にも違いが生じるかを検証する。
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Causes of Carryover |
DNA分析の外注を2件予定していたが、十分な質のサンプルを得ることができなかったため、今年度は1件のみの外注となってしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残りのDNA分析の外注に使用する。
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Research Products
(6 results)