2018 Fiscal Year Research-status Report
海洋島における開花時期の表現型可塑性が促進する生態的種分化の解明
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15K07203
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
山本 節子 (鈴木節子) 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (70456622)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 小笠原諸島 / 固有種 / 種分化 / エコタイプ |
Outline of Annual Research Achievements |
自然集団におけるエコタイプ間でどの程度の花粉流動があるのかを定量化するために、自然条件下で受粉した種子の交雑率を調べた。これにより現在の交配後隔離の程度を評価することができる。5サイト、サイト当たり11-18母樹(合計74母樹)、約1300という十分な数の実生が得られた。これらの実生からDNAを抽出し、オオバシマムラサキで開発されたマイクロサテライトマーカー16座を用いて遺伝実験を行い、遺伝子型の決定まで完了することができた。次年度は、自然交配種子の交雑率を推定するための解析を進めたい。 湿性型エコタイプと乾性型エコタイプの生育条件を模した栽培実験を行った。その結果、苗高は湿性型エコタイプを湿性環境で育てた場合の方が、湿性型エコタイプを乾性環境で育てた場合よりも高かった。一方で、乾性型エコタイプを乾性環境で育てた場合よりも乾性型エコタイプを湿性環境で育てた場合の方が苗高が高かった。死亡率は、湿性エコタイプを湿性環境で育てた場合より、湿性エコタイプを乾性環境で育てた場合の方が高かった。また、乾性型エコタイプの死亡率はどちらの環境でも同程度で、湿性エコタイプよりも低かった。苗への給水を止め徐々に乾燥させ、苗がしおれ始めた時の土壌水分量は湿性エコタイプの方が乾性エコタイプよりも有意に高く、湿性エコタイプの方が水分要求性が高いことが示された。開花期のずれは、乾性エコタイプでのみ開花が確認され、約半数の個体で開花した。しかし、乾性エコタイプにおいて湿性環境と乾性環境といった栽培条件によって、開花期のずれは生じていなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度、育児休暇から復帰したが、以前に比べて研究のための時間が大幅に削減され、予定していた実験および解析を完了させることができなかった。具体的には、自然交配種子の交雑率を推定するための解析に着手できなかった。また、栽培実験では、生育環境の違いが開花期のずれを生じさせるかを検討することが主目的であるが、設定した環境条件が不適切であったため十分な開花が見られなかった。今年度途中から環境を改善させ、十分な開花が見られるようになったため、開花期のずれを検討するためにもう1シーズン開花期の観察を行う必要が生じている。また、オオバシマムラサキに生じている種分化の遺伝的基盤を明らかにするために行う予定だったドラフトゲノムの取得も、質の高いDNAサンプルを得ることができず次年度に行うこととなった。
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Strategy for Future Research Activity |
自然交配種子の交雑率を推定する。栽培実験は開花時期のずれの有無をもう1年間調査する。また、オオバシマムラサキに生じている種分化の遺伝的基盤を明らかにするためのドラフトゲノムの取得を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)育児のために研究時間が以前より削減され、研究の進捗が予定通りに進まなかったため残額が発生した。また、オオバシマムラサキに生じている種分化の遺伝的基盤を明らかにするために行う予定だったDNA分析の外注も、質の高いDNAサンプルを得ることができず次年度に行うこととなった。 (使用計画)主にDNA分析の外注に使用する。
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