2015 Fiscal Year Research-status Report
大規模長期連続調査による東北地方太平洋沖地震後の潮間帯生物群集の回復過程の解明
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15K07208
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 隆史 北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 准教授 (90240639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地震 / 攪乱 / 岩礁潮間帯 / 回復 / 遷移 / 固着生物 / 群集 / メタ群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究目的】東北地方太平洋地震前後15年間の調査データを用い、潮間帯群集の地震後の回復過程について①メタ群集レベルでの各種アバンダンスの変化とその原因と帰結、②局所群集の安定性の3要素(群集変動性、地震への抵抗性、地震からの回復速度)の相互関係、③地震によるメタ群集の変化が小規模撹乱後の遷移に及ぼす影響を解明する。
【27年度の研究内容と成果】岩礁潮間帯では波浪によって生じた小規模な裸地(撹乱パッチ)における遷移が種多様性の維持に重要な役割を果たすが、この遷移は巨大地震によって変化するかもしれない。第一に、メタ群集スケールで多くの種が減少すると考えられることから、撹乱パッチ内でも群集の種組成は地震前後で変化し(予測①)、α多様性は地震前より低くなるだろう(予測②)。第二に、地震直後はメタ群集スケールで遷移初期種の割合が上昇すると考えられるため、撹乱パッチでも遷移初期種の割合が増加し(予測③)、遷移の速度(種組成の時間変化量)は遅くなるだろう(予測④)。第三に、地震によって無機環境や種プールの組成の空間変異性も増大すると考えられることから、撹乱パッチでも種組成の空間変異性が大きくなるだろう(予測⑤)。そこで東北地方太平洋沖地震前後に撹乱パッチを模倣した人工裸地を作成し以上の予測を検証した。人工裸地の種組成は地震前後で有意に異なり、地震後にはα多様性は上昇し、群集構造の空間変異性は地震後に大きくなった。これらの結果は上述の予測①と⑤と一致する。一方、予測②とは異なり、α多様性は地震後に上昇した。また、予測③と④に反して、初期種の割合が増加せず遷移の速度も遅くならなかった。いずれの結果も地震による固着生物のメタ群集の変化と良く対応していたことから、局所撹乱パッチでの遷移の地震後の変化は、種プールであるメタ群集に生じた変化を反映していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた野外調査をすべて行うことが出来た。得られたデータと地震前のデータを比較して解析することで、地震によるメタ群集の変化が小規模撹乱後の遷移過程に及ぼす影響について、その一端を明らかにすることができた。 これらの結果と関連する成果を、学術論文等6報、2冊の書籍への分担執筆、北海道大学大学院市民公開講座での講演1件、を含む6件の学会等での講演(日本生態学会での企画集会の開催と国際シンポジウムでの発表)として公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度については、岩礁潮間帯生物群集の野外調査では全調査項目を前年度と同様の内容を行う。得られたデータに地震前のデータを合わせて解析し、群集の回復過程について以下の3つの疑問①メタ群集レベルでの各種アバンダンスの変化とその原因と帰結②局所群集の安定性の3要素(群集変動性、地震への抵抗性、地震からの回復速度)の相互関係③地震によるメタ群集の変化が小規模撹乱後の遷移過程に及ぼす影響、を解明する。
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