2016 Fiscal Year Research-status Report
大規模長期連続調査による東北地方太平洋沖地震後の潮間帯生物群集の回復過程の解明
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15K07208
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野田 隆史 北海道大学, 地球環境科学研究院, 教授 (90240639)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地震 / 攪乱 / 岩礁潮間帯 / 回復 / 遷移 / 固着生物 / 群集 / メタ群集 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はこれまでに研究例のなかった沈降を伴った巨大地震後の帯状分布の長期的変化を明らかにするために、潮間帯中部の優占種を対象に東北地方太平洋沖地震の後の5年間の帯状分布の推移を追跡し解析した。2011年にはいずれの種でも地盤沈下に伴う帯状分布の下降が見られたが、その後の変遷は種によって大きく異なった。固着動物についてみてみると、イワフジツボでは1年後に帯状分布が上方に拡大するとともに分布量が増加し、2014年には地震前の状態に回復した。これに対しチシマフジツボは地震直後に激増したがその後は徐々に減少し、2014年以降は地震前の状態にもどった。二枚貝ではムラサキインコガイは減り続けたのに対し、地震直後に目立った増減を見せなかったマガキは2014年になって激増し2016年の時点でも分布量は高いレベルにあった。海藻はいずれも地震直後には分布量は目立った増減を示さなかったものの、マツモは2012年にいったん地震以前よりも多くなったが2014年には地震前の状態に回復した。一方、ベニマダラは除々に減少し2016年の時点でも未だに回復していない。このように多くの種で地震直後より地震1年以上経過してからの大きな減少や増加が認められたことから、帯状分布の変遷は津波よりも沈降の影響を強く反映したものと言える。また、2016年の時点の帯状分布は6種中3種で地震前とは明らかに異なっていた。この事実は、地震から5年たった段階でも岩礁潮間帯の固着生物群集は完全に本来の状態には回復していないことを意味する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた野外調査をすべて行うことができた。また得られたデータと地震前のデータを比較して解析することで、東北地方太平洋沖地震後の5年間の岩礁潮間帯生物群集の変化について明らかにできた。 これらの結果と関連する成果を、学術論文等4報、7件の学会等での講演として公表することができた
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Strategy for Future Research Activity |
29年度については、岩礁潮間帯生物群集の野外調査では全調査項目を前年度と同様の内容を行う。得られたデータに地震前のデータを合わせて解析し、群集の回復過程について以下の3つの疑問(1)メタ群集レベルでの各種アバンダンスの変化とその原因と帰結,(2)局所群集の安定性の3要素(群集変動性、地震への抵抗性、地震からの回復速度)の相互関係,(3)地震によるメタ群集の変化が小規模撹乱後の遷移過程に及ぼす影響、を解明する。
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Research Products
(11 results)