2015 Fiscal Year Research-status Report
アリ随伴がアブラムシ共生微生物の進化・系統に与えた影響
Project/Area Number |
15K07210
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
八尾 泉 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (70374204)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ブフネラ / アブラムシ / アリ共生 / アミノ酸代謝 / 進化速度 / 自然選択 / 系統樹 |
Outline of Annual Research Achievements |
カシワの葉に寄生するTuberculatus macrotuberculatusは,アリ随伴下で甘露排出頻度が増加し,吸汁した篩管液のアミノ酸を未吸収のまま甘露に流入させていることが示唆されている。T. macrotuberculatus単一種で示唆された,随伴アリの有無によって増減する篩管液流入量の事象を,アリと共生するアブラムシ種と共生しないアブラムシ種の種間比較に外挿すると,篩管液流入量がアリ共生のタイプによっても異なると予想される。さらに,篩管液流入量の違いによって,宿主アブラムシがBuchneraのアミノ酸代謝機能に依存する程度も異なるのではないかと考えられる。
この研究では,Tuberculatus属アブラムシ23種(アリ共生型11種と非共生型12種)を対象に,Buchneraのアミノ酸代謝関連遺伝子にかかる選択強度と進化速度を比較した。アミノ酸代謝関連の3遺伝子(TrpB, ilvD, TrpEG)から, dNとdSの比dN/dS (=ω)を推定した。さらにアリ共生種クレードと非共生種クレードの各ωを算出したモデルと,系統樹内の全枝で進化速度一定とするモデルとの尤度の差を,カイ二乗テストで検定した。その結果,ilvD遺伝子に対してのみ,進化速度が種間で一定ではないモデルが有意になった。さらに,アリ共生・非共生クレードのωを算出したモデルと系統樹内の全枝で進化速度一定とするモデルを比較した結果,アリ共生・非共生クレードのωを算出したモデルが有意に高かった。
アリ共生・非共生クレードの平均ωはそれぞれ0.2464と0.0878の<1であり,両クレードのilvD代謝遺伝子は強い選択圧にさらされていることが示唆された。しかし,アリ共生の平均ωは非共生クレードのものに比べて約3倍大きな値であり,アリ共生アブラムシのBuchneraは非共生のものに比べて,ilvD代謝は選択圧が緩和されていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アミノ酸代謝関連遺伝子について、さらに数個の遺伝子を予定しているが、当該遺伝子のプライマーデザインの情報が足りない。
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Strategy for Future Research Activity |
ブフネラのアミノ酸代謝関連遺伝子について、さらに複数個の遺伝子を探索するために、次世代シーケンサーを用いて、ブフネラのゲノム情報の大部分をシーケンスすることを予定している。
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Causes of Carryover |
研究結果を補強するために,探索するアミノ酸代謝遺伝子の数を増やしたが,それらのプライマーが実験材料にうまく合わず,一時実験が停滞している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後,アミノ酸代謝遺伝子を網羅的に調べるために,次世代シーケンサーの利用を考えており,1サンプルで120,000円の料金がかかる。
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