2016 Fiscal Year Research-status Report
3世代にわたる悉皆調査で明らかにする絶滅危惧種ヒョウモンモドキの繁殖生態
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15K07212
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
玉手 英利 山形大学, 理学部, 教授 (90163675)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
半澤 直人 山形大学, 理学部, 教授 (40292411)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / ゲノム解析 / 一塩基多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
広島県で飼育繁殖されている集団から採取された幼虫96個体をサンプルとしてRADseq法により検出した一塩基多型(SNP)のうち、特に多型性が高く正の自然選択がかかっていると予想されるSNP領域10カ所と、多型性が低く負の選択(機能的制約)があると思われるSNP領域10カ所を選んで、新たなプライマーを作製した。次に、2003年に野外で採取され、アルコール保存された幼虫サンプルを対象として、新プライマーを用いて遺伝的変異の検出を行った。その結果、一部のSNPについては遺伝子型を判定できたが、ゲノムDNAが劣化しているために成功率が低く、悉皆調査の手段としては効率上で問題があることが明らかになった。そのため、SNPを検出する別な方法として、ヒョウモンモドキの近縁種3種の全ゲノムデータから相同性が高く繰り返しがある配列を探索し、プライマーを作製して多型性を調べた。その結果、変異性が高いマイクロサテライトとSNPを19座位、ミトコンドリアDNAのSNPを2座位、得ることができた。これらの遺伝マーカーと昨年度のSNPマーカーを用いて、野外個体の一部及び飼育個体を対象とした集団構造解析を複数の方法によって行った。野外個体では、生息パッチ内の個体間血縁度は、異なる生息パッチ間の個体間血縁度よりも有意に高かった。生息パッチ間の地理的距離と遺伝的距離には弱い相関がみられ、距離による隔離が生じていることが示された。飼育個体では、飼育ハウス間で中程度の遺伝的分化が見られた。以上から、野外個体群では生息パッチ間でのgene flowが地理的条件によって制限されていること、飼育個体ではハウス間での交配を行うことが遺伝的多様性を維持するうえで適切と考えられること、が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究で実験材料としたヒョウモンモドキ幼虫サンプルのうち、16年前に野外で採取され保存されてきたサンプル(野外個体サンプル)はゲノムDNAの劣化が進んでいるため、今年度に試みた特異的プライマーによるSNP領域の増幅が予定どおりに進まなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノムDNAが劣化している野外個体サンプルについて、28・29年度とは異なる方法で,個体レベルの遺伝的多様性を測定する。また、野外個体サンプルと並行して、すでにSNPデータが得られている飼育個体サンプルについては、ベイズ法を用いた集団構造解析を行い、複数の飼育個体群の遺伝的分化を定量化した結果を、論文化する。
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Causes of Carryover |
28年度に計画していたRADseqデータに基づいて作製した新規プライマーによるSNPの検出のうち、野外個体サンプルについてはDNAが劣化していたためデータを得ることができなかった。野外個体サンプルは二度と採取できない貴重なサンプルであるため、この問題点が明らかになった段階で未解析だった野外個体サンプルについては、RADseqデータに基づく新マーカーによる分析を中止した。その分の費用が残余として生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の問題が明らかになったため、ヒョウモンモドキの近縁種の保存的配列をもとに新たなSNPマーカーを開発したので、来年度は、このマーカーを用いて28年度に未解析だった野外個体サンプルの解析を行う計画である。
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