2015 Fiscal Year Research-status Report
外来種ツマアカスズメバチの生態解明と定着による生態系への影響評価
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15K07223
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
上野 高敏 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60294906)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 採餌効率 / 分布拡大 / 土着種との比較 / 生態系への影響 / 新記録 / 訪花行動 / 狩り |
Outline of Annual Research Achievements |
ツマアカスズメバチは対馬北部で2012年に採集されたのが日本における最初の記録であるが、その後、島内で分布を広げ、2014年の秋の段階では対馬南部を除く北部広域に見られるようになっていた。2015年度の研究調査により、ツマアカスズメバチは分布の拡大だけでなく、個体密度をさらに上昇させ続けていることが明らかとなった。 例えば野外調査にて分布拡大状況を確認したところ、対馬南東部の厳原町へ進出していることを確認した。分布拡大の速度は緩やかになっているように思えるが、それでもほぼ対馬全域に分布を拡大したことになる。 また個体密度調査を実施したところ、一部地域を除いて個体数は増加し、とくに中部において著しく個体密度が増加した地域が認められた。たとえば峰町では最大で15~21匹に達するツマアカスズメバチが蜂洞前(ニホンミツバチ巣)に飛来していたのである。このような高密度のツマアカスズメバチを研究代表者は原産地で見たことがなく、他の外来種同様、ツマアカスズメバチも激増する恐れがある。また地元住民への聞き取りにより、本種による人への刺傷例が対馬島内で増えいる可能性が示唆された。 さらに、ミツバチや他土着生物への影響を評価するため、ツマアカスズメバチの採餌行動を詳細に調査した。その結果、本種が土着で系統学的に極近縁なキイロスズメバチより、狩りがうまく、花上の獲物を狩るために必要な時間が三分の一程度であることや、ミツバチ巣前での狩りの成功率が非常に高いことを明らかにした。またどのような植物を訪花するのかについても明らかにした。 加えて、九州本土である北九市内で採集されたツマアカスズメバチとその巣を確認したため、日本本土からの正式記録として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ツマアカスズメバチが引き起こすであろう生態系への影響を、採餌行動(狩り)の効率を土着種と比較することにより示唆できた(土着種より狩りが非常にうまいことを示した)ことは大きな成果であると判断する。 また、残念なことに、九州本土より本種を確認してしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
ツマアカスズメバチの分布拡大については調査を継続する。とりわけ、日本本土への侵入が確認された以上、当初の研究計画に加え、九州北部域をモニタリング対象地域として、野外調査を強化する。 またツマアカスズメバチの生態系への影響に関しては引き続き調査を行う。狩りの効率だけでなく、どのような獲物を好むのかなどについても土着種との比較を行っていく。
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Causes of Carryover |
ツマアカスズメバチの早春の発生状況調査を4月上旬に実施するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
4月上旬に対馬にて野外調査を実施する予定であり、この調査を持って、予算残額がちょうど0円となる計算である。
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