2015 Fiscal Year Research-status Report
植物の花の多モード情報発信が訪花昆虫の学習を促進するメカニズムの解明
Project/Area Number |
15K07232
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
香取 郁夫 近畿大学, 農学部, 准教授 (00319659)
|
Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
|
Keywords | 色学習促進 / フェニルアルデヒド / 黄と青 / 人工花 / 学習速度 / トレーニング / テスト |
Outline of Annual Research Achievements |
実験1.「匂いによる色学習促進実験1」として、モンシロチョウが訪花時に行う花の色学習が花から漂う匂いによって促進されるかどうかを検証するための実験を行った。 〈方法〉モンシロチョウが生得的に好む色(黄と青)と花香成分(フェニルアルデヒド)を用いて学習実験を以下の要領で行った。実験では個体ごとに①テスト過程(生得的選好性テスト)→②トレーニング過程→③テスト過程の順に経験させた。また、テスト過程およびトレーニング過程において常に匂いなしの人工花を用いる実験Aと、常に同一の匂いを付加した人工花を用いる実験Bを行った。テスト過程において実験A、Bともに各個体につき、青と黄色の人工花のどちらかを選ぶか5回訪花・選択させた。この時、人工花に報酬(蜜)はなかった。一方トレーニング過程においては、実験A,Bともに報酬としての蜜が付加された青色の人工花のみを提示し、各個体2回訪花吸蜜させた。そしてトレーニングの前から後へ青色人工花への訪花率(青の選択率)がどの程度増加したか(学習速度)を算出し、実験A,B間で比較した。 〈結果・考察〉匂いなしの実験Aではトレーニングによって青の選択率が雌雄ともに25%前後で上昇したが、匂いありの実験Bでは雌雄ともに50%前後上昇した。学習速度aの推定値は実験Aの雌雄では約0.66、実験Bの雌雄では約1.2~1.3となり、実験AよりもBのほうが学習速度が有意に高くなった。これは花の匂いがあるときはないときより色学習が速いことを意味する。つまりマルハナバチと同様にモンシロチョウにおいても「花の匂いが花の色学習を促進する」ことが実証された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実験昆虫の飼育管理、実験道具や備品類の準備がスムーズにいき、実験データ収集の時間を十分にとることができたため。
|
Strategy for Future Research Activity |
実験2.「匂いによる色学習促進実験2」を行う。 モンシロチョウは生得的に花の匂い成分に誘引されるが、単体の匂い成分よりも数種類の匂い成分が混合された匂いにより強く反応する(Omura et al. , 1999、Kandori et al., submitted)。実験1では単体の匂い成分を用いたが、実験1と同じ実験系においてチョウがより強く誘引される混合匂い成分を用いた場合(実験2)において、実験1同様花の匂いによる色学習促進が見られるかどうかを検証する。
|
Causes of Carryover |
科研費補助金の当該研究課題における採用決定が年度後半(10月)であったため、実験遂行のための物品購入が一部間に合わなかったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験データの整理、解析を行う補助員のためのアルバイト代、関連研究者との打ち合わせや情報交換のための旅費などを増額し、研究がよりスムーズに進行できるよう経費を配分する。
|