2015 Fiscal Year Research-status Report
頭骨からみた江戸時代人の地域性 -形態・梅毒・刀傷-
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15K07242
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Research Institution | National Museum of Nature and Science, Tokyo |
Principal Investigator |
坂上 和弘 独立行政法人国立科学博物館, 人類研究部, 研究主幹 (70333789)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 江戸時代人 / 頭骨 / 貴族形質 / 損傷 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、国立科学博物館ならびに東京大学総合研究博物館に収蔵されている、江戸時代人骨400個体程度のデータを採取し、新たに発掘された人骨の整備を行う予定であった。 当初の目的はほぼ達成し、新たに213個体分を計測・観察を行った。ただ、収蔵されていた人骨の保存状態があまり良好ではない個体が多く、また、新たに収集された人骨標本も破損が著しい個体が多くあったため、当初予定していたよりも個体数は少なくなった。 本来は平成28年度の予定であった、九州大学所蔵の「天福寺遺跡出土人骨」を中心とした江戸時代人の調査を行い、41個体のデータを採取できた。これらの多くは九州地方の甕棺出土人骨であるが、興味深いことに、江戸府内から出土した「円形木棺」人骨に近い形態を示し、江戸府内出土の「甕棺」人骨とはやや異なる傾向が認められた。 また、江戸時代以前のデータとして、約60個体の中世人のデータを採取した。その中には、平成26年度に発掘された「有楽町一丁目遺跡」から出土した室町時代人も含まれている。中世人は江戸府内から出土いた「円形木棺」人骨と似た形態を示すが、先行研究のようにやや長頭傾向が認められた。これらの解析により、日本人小進化の中で、江戸府内の「甕棺」人は特殊な頭骨形態を持つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
結果的に標本数は少なくなってしまったが、当初予定していた標本をほぼ全て調査し、平成28年度の目的を一部完了させた。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、平成28年度は日本各地に保管されている江戸時代人骨の調査を行う。また、江戸以前の情報も必要であるため、中世時代人骨の調査も平行して行う。
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Causes of Carryover |
当初予測していた人骨の整理作業時間が、標本の保存状況の悪さなどのため、非常に短時間で終了した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度も新たに出土した人骨が多数存在しており、その整理作業に充てる費用として計画している。
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