2016 Fiscal Year Research-status Report
全ゲノム情報を利用した胴割れ耐性形質の解析と育種利用
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15K07251
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
石川 隆二 弘前大学, 農学生命科学部, 教授 (90202978)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 胴割れ耐性 / マーカー選抜 / ゲノム評価 / QTL解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
胴割れ耐性領域のQTL解析から,第5染色体のqSW5近傍を特定し,RILにおいては組換えを確認した.さらに,寄与率から,qCK5-1,qCK8-1,qCK8-2が高度の胴割れ耐性を示すことが確認された.qCK5-2 はqSW5に密に連鎖するがRILにおいては組換え系統を得ているため,この検証が必要となる.また,これら以外の領域における多型マーカーの開発をすすめ,さらに関与する胴割れ耐性領域を検証する検討を選抜した. やや効果の低い耐性を示す系統を16Tならびに20Tを選抜し,戻し交雑による実用的な育種母本の開発を行うともとに世代促進を図り,さらなる戻し交雑をすすめているため,耐性量域の絞り込みを行える材料となることが期待される.さらに,戻し交雑を進める過程において実用可能な桿長と耐性程度を持つ系統を選抜した.これらの社会への実装を行いつつ,ゲノム情報から作成した多型マーカーを追加することでRILにおける詳細なQTL解析をすすめ,候補量域の絞り込みをする準備ができた. これまで胴割れ耐性を検証するために新潟県の自然条件のもとで栽培することにより胴割れを検出してきたが,玄米を直接加湿して胴割れを短時間で検出する加湿法による胴割れの検証が可能であることがわかり,世代を進めた分離集団における表現型の反復した検証が可能となった. RILとこれまで供試した多型マーカーにより,QTL領域を4カ所検出したが,それらを持たずにやや耐性を示す系統を選抜した.そのため,同系統のうち加湿法による反復解析を行って再選抜したため,同系統のゲノムデータをとる準備ができた.この系統に導入された耐性親の恋ほのかからの導入領域を特定することで新たなQTLを検出する可能性がでてきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
社会への実装可能な系統を選抜し,自然条件以外での加湿による耐性を含めて反復調査をすすめて良好な結果を得た.ただし,各耐性領域に座乗する候補遺伝子の絞り込みが十分に進んでいないため,おおむね良好とした.この状況を改善するために戻し交雑をすすめ,県の試験研究機関との連携による冬季世代短縮後の戻し交雑世代育成をすすめている.これらの系統群から2017年度において候補量域の絞り込みを行うことが期待されることも理由の1つである.
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Strategy for Future Research Activity |
ゲノム情報から多型マーカーを作出しており,これらのマーカーによりより詳細なQTL解析を行うことができる.RILによりqSW5など細粒遺伝子を切り離した染色体を有する系統が期待されるため,それを検証する.また,実際の育種への利用から,耐性系統に由来する粒形に関する遺伝子群ならびに桿長に関する遺伝子群の評価を行う.その結果に基づき,有望領域のみを有した系統を選抜し,胴割れ耐性遺伝子群の特定を行う.具体的には,RILによる詳細な解析により,これまで検出したqCK5-1,qCK5-2,qCK8-2,qCK8-3の各因子のQTL寄与率の再評価を行うとともに,これ以外の胴割れ耐性量域を検出する.20T 選抜系統がそれら以外の耐性を保有する可能性が高く,戻し交雑をすすめているため,ゲノム解析を行うことにより恋ほのか由来の多型量域を検出して耐性との連鎖関係を明らかにできるような分離集団を育成する. 新たに耐性量域を有する酒米系統RILを追加で作成しているため,これらに酒米系統を戻し交雑して,酒米に不要な形質を落とすと共に,導入された耐性遺伝子に隣接する領域を絞り込む.これらの実験から,胴割れ耐性遺伝子群の評価と実用化できるマーカー,系統を開発・育成する.
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