2015 Fiscal Year Research-status Report
相同染色体近傍領域間相互作用によるイネ雑種弱勢の原因遺伝子単離と解析
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15K07252
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
久保山 勉 茨城大学, 農学部, 教授 (10260506)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
一谷 勝之 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 准教授 (10305162)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 生殖隔離 / 雑種弱勢 / イネ / 遠縁交雑 / 遺伝子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
雑種第一代で見られる弱勢は二遺伝子座における対立遺伝子間のエピスタティックな相互作用によるものが報告されてきた.私達はこれまで岡(1957)によってイネで最初に報告された雑種弱勢が第11番染色体の極めて狭い染色体領域に存在する遺伝子間相互作用によることを見出している.もし、この雑種弱勢が同座の対立遺伝子座間相互作用によるものであれば,これまで報告のない新しい雑種弱勢発症メカニズムの解明につながると期待される.そこで、本研究課題は雑種弱勢原因遺伝子HWA1とHWA2の単離と解析を行ない,雑種弱勢が生じるメカニズムの解明を目的研究を行う. 本年度はHWA1とHWA2の染色体領域の構造を解明することを目標に研究を行った.まず, 雑種弱勢原因対立遺伝子Hwa1-1を持つATD14系統のフォスミドライブラリーからHWA1領域のDNAマーカーを用いてPCR増幅するクローンの単離を目指した.その結果,1クローンを単離した.しかし,使ったDNAマーカーの多くはPCR増幅が十分でなく,クローンを含む培養液を識別することが困難であるなどの理由によりその他のクローンについては単離を行うことが出来なかった.次に,次世代シーケンサーの中で1回のrunから出力される配列(リード)が長いPacBioの4セルを用いて雑種弱勢原因対立遺伝子Hwa2-1を持つPTB7系統の全DNAを解析した.得られた配列に対してDNAマーカーのPCR増幅領域を用いてBLAST検索すると複数のリードが選抜された.そのため今後はリードの重なりを利用してHWA2領域構造の概要を明らかにできるのではないかと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は雑種弱勢原因遺伝子の存在する染色体領域のフォルミドクローンコンティグを作成する予定であったが,クローンの単離が遅れてコンティグを作成することができなかった.しかし,長い解読配列を持つ次世代シーケンサーPacBioを用いることでコンティグを作成し,染色体領域の構造の概要を明らかにするための技術的な問題を克服した.
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Strategy for Future Research Activity |
まず,次世代シーケンサーによって得られたPTB7系統の塩基配列データをBLASTによって相同性検索し,解読配列(リード)のなかからHwa2-1領域に存在するものを選抜する.Hwa2-1領域の染色体において各リードを整列化し,リードのコンティグを作成する.しかし,各リードの配列の精度は80%台と極めて低く,遺伝子の予測には用いることができない.そのため,3つ以上のリードが存在する領域では正しい配列を推定する.このようにして作成された暫定配列にイルミナの短いリードを貼り付けて比較し,配列の修正,編集を行い,可能な限り正しい配列を得る.一方,解読配列の長いDNAシーケンサーPacBioの新製品がリリースされ,これまで問題のあった解読配列の正確性が格段に向上した.そのため,今年度はHwa1-1を持つATD14の全DNAを新しいPacBioを用いて解読し,Hwa1-1近傍の染色体領域の構造を決定する.
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Causes of Carryover |
今年度,分担者の一谷氏は実験のための系統作成や交雑実験を中心に研究活動を行い,当初予定していたフォスミドライブラリーの作成と選抜の実験を行っていないため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は原因遺伝子領域の塩基配列解読を積極的に行うことに研究費を支出する.第1に次世代シーケンサーを用いた解析,次に配列の確認のための従来から行われてきた自動シーケンサーを用いるサンガーシーケンス解析に主として支出する予定である.
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