2016 Fiscal Year Research-status Report
Utilization of CRISPR/Cas9 for breeding of High GABA content tomato
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15K07253
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
野中 聡子 筑波大学, 生命環境系, 助教 (50580825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松倉 千昭 筑波大学, 生命環境系, 教授 (60361309)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ゲノム編集技術 / トマト / GABA / GAD |
Outline of Annual Research Achievements |
γ-アミノ酪酸は,近年リラックス効果や血圧上昇抑制効果などから健康機能性成分として注目を集めている.高血圧症予備軍への血圧抑制は,薬剤投与よりも食習慣を通じて行うことが好ましい.発酵食品中にGABAが多く含まれることが知られているが,発酵食品を食する地域は限られている.このため,世界で広く利用される食物でのGABAの高蓄積が望ましい.トマトは世界中で広く利用される食物である.しかしながら,その蓄積量は十分でなくまた不安定的で,栽培条件などによって蓄積量が大きく変動することがある.GABAの蓄積量が栽培環境に作用される原因の一つにGABA生合成酵素(GAD)のC末端にある自己阻害機構の作用がある.GADはC末端が自己阻害作用をになっており,定常時にはGADの活性中心はC末端に覆われている.C末端は,カルモジュリンバインディングサイトを含み,植物がストレスを感受する条件において,発生するカルシウムイオンがこのカルシウムカルモジュリンバインディングサイトに結合する.カルシウムの結合により,GADのC末端が変形し,自己阻害作用が崩れてGADの活性中心が現れ,GADが活性化しGABA合成が促進される. これまでの知見から,トマトにはSlGAD1からSlGAD5までの5つのGADが存在することが報告されており,特にSlGAD2及びSlGAD3がトマト果実でのGABAの蓄積に関与することが示されていた.本年度は,トマトにおけるGABAの安定的高蓄積化を目指すために,ゲノム編集技術CRISPR/Cas9を用いてSlGAD2及びSlGAD3の自己阻害機構を含むC末端領域の直前に停止コドンを挿入し,SlGAD2およびSlGAD3のC末端を除去に取り組んだ. 本研究により,GABAを安定的に高蓄積するトマトを作出することができれば,高血圧症予備軍への高血圧抑制に効果が期待できる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27度までに,SlGAD2についてC末端側30アミノ酸残基(GAD2ΔC30)および48アミノ酸残基(GAD2ΔC48),SlGAD3について,C末端37アミノ酸残基(SlGAD3ΔC37)を標的とするCRISPR/Cas9ベクターを構築しそれぞれマイクロトムへ形質転換した.SlGAD2ΔC30,SlGAD2ΔC48, SlGAD3ΔC37についてそれぞれ11個体,11個体,9個体のT0世代を得た.標的部位について変異の導入を確認したところ,それぞれ10個体,11個体,9個体で変異の導入が確認できた.赤熟果実でのGABA 蓄積量を評価したところ野生型の10倍程度高蓄積する系統を見出した.平成28年度は引き続き世代を進めてT1個体を得て遺伝型を解析し,変異ホモ系統が得た.SlGAD2を標的とした個体においては,葉におけるGABA含量が向上しており,葉が黄緑色になる,背丈の極端な矮化,結実数の極端な現象など栄養成長における生育異常が認められた. SlGAD3を標的とした個体においては,栄養成長における生育異常は認められなかった. SlGAD3において,赤熟果実におけるGABA含量を測定したところ,GABAが高蓄積する系統があった.最大で野生型の15倍の高蓄積であった.このとき,血圧上昇抑制に必要十分な量を蓄積していた.以上のことから,本研究で得られたトマトは,血圧上昇抑制に効果があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度までにT1世代において,実験モデル品種であるMicro-TomにおいてGABA高蓄積を示す変異導入ホモ系統,T-DNA分離除去系統を得ることができた.これらについて論文に取りまとめ,発表する予定である.平成29年度以降は,実験モデル品種Micro-TomのGABA 高蓄積系統と食用品種(愛知ファースト)と交雑しF1を得る.得られたF1は,特性評価のために特定網室にて栽培を実施し, GABA含量の測定を行う.平成28年度までに得られたGABA高蓄積系統については,食品安全性試験,環境影響評価試験などを行う.さらには,血圧上昇抑制への効果的を調べるために,動物試験の準備をおこなう.
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Causes of Carryover |
今年度は,研究計画を変更し栽培を中心としたため,当初予定していた分子生物学的種表に必要な高額な試薬を購入する必要がなくなった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は,今年度までに集めたデータを取りまとめて国際学会及び論文の形で発表する予定であるため,その費用に充てる.また,食品安全性試験なども行なっていく予定なのでその委託分析費用に充てる.できればマウス等を用いた実験も行いたいと考えているので,追加実験としその費用に充てる.
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Research Products
(2 results)