2016 Fiscal Year Research-status Report
イネ属におけるカドミウム耐性の多様性とカドミウム耐性機構の解明
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15K07260
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Research Institution | Akita Prefectural University |
Principal Investigator |
赤木 宏守 秋田県立大学, 生物資源科学部, 教授 (50315587)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | イネ / 野生種 / カドミウム |
Outline of Annual Research Achievements |
南米に自生するイネ野生種のO. latifolia はCCDDゲノムを持つ4倍体で、その中には高いカドミウム(Cd)耐性を示す系統とCd感受性の系統が存在していた。このCd耐性とCd感受性の系統の転写産物をRNAseqにより比較解析することで、Cd耐性と関係する遺伝子の同定を試みた。 O. latifoliaにはリファレンス配列がないため、まず、それぞれの系統についてシークエンスリードのde novoアッセンブルを行いコンティグ配列を得た。それぞれのコンティグを用いて発現解析を行ない、Cd処理によって5%水準で有意に発現量が増加したトランスクリプトを抽出し、Blast検索により遺伝子機能の推定を行った。 Cd耐性およびCd感受性系統の根において、それぞれ58個および111個の遺伝子の発現量がCd処理によって有意に増加していた。何れの系統においても、ストレス応答や障害応答、障害防御に関わると推定される遺伝子の発現がCd処理によって高まっており、これらは O. latifoliaがCdに対応するための共通の反応であると考えられた。 一方、Cd感受性系統では、Cdの解毒に関わるとされる数多くの遺伝子の発現量が増大していたのに対し、Cd耐性系統ではそれらの多くは発現が誘導されていなかった。このことから、Cd耐性系統ではCdを解毒する必要性が低いこと、すなわち細胞内のCd毒性が高まっていない可能性が示唆された。 さらに、Cd耐性系統では、細胞壁に存在すると考えられるタンパク質の遺伝子の発現が高いという特徴が明らかとなった。根の細胞壁は、植物が最初にCdに出会う組織で、その分子構造や形態がCdの吸収や輸送に重要な役割を果たしていると考えられている。Cd耐性系統で発現が増加していた細胞壁のタンパク質は、細胞壁で細胞内へのCdの輸送の制限に関わっている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
イネ属の野生種の中で、CCDDゲノムを持ち南米に自生しているO. loatifoliaの中にCd耐性の高い系統が存在することを見出し、Cdで発現が誘導される遺伝子をRNAseqにより同定した。さらに、これらの遺伝子機能の解析から、O. latifoliaのCd耐性の特徴の推定することができた。 一方で、昨年度、栽培イネと同じAAゲノムを持つO. barthiiにおいて、RNAseq解析で同定したCdで誘導される遺伝子について、定量PCRによる発現の詳細な解析が計画通りに進んでいないことから、研究はやや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
O. latifoliaは高いCd耐性を示し、そのCd耐性に関与する候補遺伝子を明らかにした。これらの遺伝子についても発現の詳細な解析を行い、O.latifolia のCd耐性の仕組みを明らかにする。また、O. barthiiにおいてCd耐性との関連が推定された遺伝子について、定量PCRによりCdによる発現変動を明らかにし、O.barthiiのCd耐性の仕組みを明らかにする。 Cd耐性とかかわる候補遺伝子について、形質転換による機能解析を実施するための準備を進める。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりも定量PCR解析用のプライマー数が少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の経費は、定量PCR実験の試薬やプライマーなどの消耗品、形質転換に向けた準備実験に使用する。
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Research Products
(2 results)