2016 Fiscal Year Research-status Report
パンコムギにおけるアレルギーの原因となる種子貯蔵タンパク質特異的抑制因子の同定
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15K07261
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川浦 香奈子 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 准教授 (60381935)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | グリアジン / パンコムギ / 遺伝子発現制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、パンコムギChinese Spring(CS)の染色体異数体系統であるテトラソミック2A系統の種子において、6D染色体上にコードされるグリアジンタンパク質が抑制されることを示した。また、CSの2D染色体がTimsteinの2D染色体と置換した系統(KT723)でも同様の現象が見られた。これらのことから、CSの2A染色体とTimsteinの2D染色体には、CSの6D染色体にコードされるグリアジンを特異的に抑制する因子が存在することが示唆される。このことを検証するため、本年度はCSとKT723を相互に交雑して2D染色体のF2分離集団を作製した。 完熟種子より抽出したタンパク質をSDS-PAGEで分離し、ペプチドの抗体を用いてウエスタンブロット解析を行った。抑制されるグリアジンはセリアック病のエピトープを持つことが示された。CSとKT723において抗体の反応量に差が見られたため、CSとKT723を交配し、後代で抗体反応量を調査した。F1では抗体反応量の減少は見られず、F2では調査した124個体のうち30個体で反応量の減少が見られた。F2において抗体反応量の減少が3:1の分離比に適合したことから、抑制効果は劣性の1遺伝子によることが示唆された。 遺伝子型の判定のため、CSおよびKT723の登熟期の種子のRNA-Seqのデータから2D染色体上のSNPsを検出し、DNAマーカーを8個作成した。また、既知のSSRマーカーよりCSとKT723で多型の見られるものを選出した。ウエスタンブロットにより表現型がKT723型だった系統について、DNAマーカーによる遺伝子型の判定を行った。さらにDNAマーカーの染色体上の位置をCSのリファレンスゲノムへの相同性検索により推定した。これらの結果より、Timsteinのグリアジン抑制因子は2D染色体短腕に座乗することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
F2分離集団を用いた遺伝解析や、既存のDNAマーカーの収集、RNA-Seqデータを用いたDNAマーカーの作成など計画していたことをおおむね進めることができた。ただし表現型に密に連鎖するようなDNAマーカーは得られていないため、新たなDNAマーカーの設計を考慮する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
グリアジン抑制因子の同定に向けて密に連鎖するDNAマーカーの作出がポイントとなる。そのため、これまでに取得したRNA-Seqのデータを精査するとともに新たなマーカーの作出法を検討する。また、これまでにグリアジンタンパク質の抑制は遺伝子の転写レベルで起こっていることが示されたため、抑制されているグリアジン遺伝子のプロモーター領域の特徴を明らかにし、その特徴から転写因子を想定した遺伝子抑制機構の解明を目指す。さらに、プロモーター領域のDNAメチル化といったエピジェネティックな制御が関連しているかを検討する。
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Causes of Carryover |
学会参加等の旅費が他の研究費で支出できたため、本年度の支出が抑えられた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の想定よりも多くのサンプルを用いてRNA-Seqを委託解析する。また、学会発表や論文投稿など成果をまとめて発表する。
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