2015 Fiscal Year Research-status Report
イネの開花期病害抵抗性の解明-柱頭表面における菌の増殖を阻止する
Project/Area Number |
15K07264
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Research Institution | 国立研究開発法人農業生物資源研究所 |
Principal Investigator |
溝淵 律子 国立研究開発法人農業生物資源研究所, イネゲノム育種研究ユニット, 主任研究員 (40425591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 重信 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, 生物生態機能研究領域, 主任研究員 (90354125)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / もみ枯細菌病菌 / 耐病性 / 抵抗性遺伝子 / 育種 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.【発光遺伝子(GFP)を導入したもみ枯細菌病菌株の雄性不稔突然変異体の穂における初期感染から発病までの観察】イネにおいては、様々な変異(葯の裂開不全、花粉の発育不良、花粉管不伸長)による雄性不稔突然変異体が見つかっている(田丸(1994)、北大農邦文紀要)。これらの変異体を入手して、穎花の開花時間、開花状況、花粉の不稔度合等を観察して、もみ枯細菌病菌の噴霧接種試験が可能である変異体を選抜した。 2.【もみ枯細菌病抵抗性遺伝子の候補遺伝子の絞り込み】もみ枯細菌病抵抗性遺伝子が第1染色体上に存在し、染色体上における抵抗性遺伝子の候補領域を本研究開始までに約500kb以内まで絞りこんでいる。抵抗性検定を行った集団の後代(3072個体)から候補領域内で組換えの起きた個体を4個体選抜し、圃場に組み換え固定系統対を栽培して切り穂検定を行った結果、抵抗性遺伝子の候補領域(QTL領域)を81.5kbまで絞りこむことができた。 3.【候補遺伝子の特定】2の結果を基に、BACクローンを選抜したところ、5つのコンティグに分断していたので、フィニッシングを行い、1つのコンティグを得ることができ、塩基配列を解読したところ、塩基配列上、遺伝子として機能していると推定される遺伝子は14個、候補領域内に存在することが推定された。 4.【発光遺伝子(GFP)を導入した病原菌株の作出】発光遺伝子(GFP)を導入した内穎褐変病菌、苗立枯細菌病菌を各々2菌株作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究での目的は、もみ枯細菌病菌の柱頭上における感染動態の解析とイネにおける抵抗性遺伝子の分子生物学的解析を併せて行うことにより、菌および植物の各々の生存戦略を明らかにするものである。イネの抵抗性遺伝子については候補領域を順調に絞り込むことができ、BACライブラリーから該当領域を含むクローンの選抜および塩基配列の解読を行うことができた。一方、菌の柱頭上での感染動態の解析のために、複数の雄性不稔突然変異体から解析対象として可能な突然変異体のスクリーニングを行った。さらに、発光遺伝子(GFP)を導入した内穎褐変病菌、苗立枯細菌病菌を各々2菌株作出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究での目的は、もみ枯細菌病菌の柱頭上における感染動態の解析とイネにおける抵抗性遺伝子の分子生物学的解析を併せて行うことにより、菌および植物の各々の生存戦略を明らかにするものである。イネの抵抗性遺伝子については候補領域を順調に絞り込むことができたので、今後も引き続き遺伝解析により候補領域の絞りこみを進めるとともに、候補領域内で推定される遺伝子のアノテーション情報から、花粉分解に関わると推定される遺伝子についてはTilling法により突然変異体を獲得し、抵抗性に変異が生じているかどうかを明らかにしていく。一方、菌の柱頭上での感染動態の解析のために、雄性不稔突然変異体での解析に着手していく。また、発光遺伝子(GFP)を導入した内穎褐変病菌、苗立枯細菌病菌についてはもみ枯細菌病菌に対する抵抗性品種、罹病性品種でどのような感染動態を示すかを明らかにしていく予定である。
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Causes of Carryover |
BACライブラリーの塩基配列解読が当初の予定より順調に進捗したため、試薬費が予定より少なくて済んだことにより次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降も、引き続きもみ枯細菌病抵抗性遺伝子の候補遺伝子の単離および形質転換体作出準備のためにPCR実験を頻繁に行う必要がある。消耗品として、DNA抽出関連試薬、複数の病原菌の維持・培養用に培地作成関連試薬および発光遺伝子を導入した病原菌作出のための生化学実験試薬および生化学実験器具等を計上した。また、研究の進展によって実験補助員が必要となったため、1名分の謝金を計上した。
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