2015 Fiscal Year Research-status Report
ヤムイモ類における沈降性アミロプラストを起点とする塊茎形状成立機構の包括的理解
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15K07269
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
川崎 通夫 弘前大学, 農学生命科学部, 准教授 (30343213)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ヤムイモ / ナガイモ / 塊茎 / 形態形成 / 重力感受 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヤムイモ類の塊茎形状は、多様性に富み、同一の品種・系統内でさえ均一になりにくい性質を有する。そのため市場価値や収穫作業性を損なう「形の悪い」塊茎が発生し、農業上の問題となっている。申請者はこれまで、ナガイモ塊茎の頂端部に、重力方向へ沈降するアミロプラストが局在することを発見し、これらアミロプラストが塊茎形状の成立に関与している可能性を報告した。本研究の目的は下記の課題を明らかにし沈降性アミロプラストを起点とするヤムイモ類塊茎の形状成立機構を包括的に理解し、塊茎形状制御のための学術基盤を構築することである。 [課題1] 塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化: ここでは塊茎形状の異なる複数のヤムイモ類を用いて、沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性を明確化することに取り組んでいる。本年度では、異なる塊茎間で沈降性アミロプラストの分布様式と存在数・量に大きな差異があることが認められ、有用なデータを得ることができた。 [課題2] 塊茎形状の成立に関わるシグナル伝達の仕組みの検証: 本年度では、生長中のナガイモ塊茎を斜めに設置して重力刺激処理し、シグナル伝達物質候補であるCa局在性・存在量の変動を解析した。現在、更に反復実験を行い、データの集積・解析を進めている。 [課題3] 塊茎形状の成立と植物ホルモンとの関係性の解明: 本年では、ナガイモ塊茎を傾斜させて重力刺激処理を行い、塊茎の上方部分と下方部分の間でオーキシン含量に差が生じるのかどうかを検証した。その結果、重力刺激処理による変動性が認められつつある。また、オーキシン輸送体関連の遺伝子の探索し幾つかの候補を見いだした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目としては、前述の通り、3つの課題について幾つかの有用なデータを得ることができた。一方で、〔課題2〕のCa局在性・存在量の変動を解析においては、Caの検出は出来るものの、さらに確度の高い解析を行うには、反復を増やして実験し、且つ、処理期間などを調整して進めていく課題がある。また、〔課題3〕では、オーキシンの定量において、オーキシンアッセイキット (Phytodeteck IAA test kit)を用いて測定してきたが、同一処理した試料間で測定値の標準偏差が大きい場合もあったので、高速液体クロマトグラフィー法を用いるなどの測定法の検討も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
〔課題1〕塊茎頂端部に局在する沈降性アミロプラストと塊茎形状の成立との関係性の明確化: では、塊茎頂端部の沈降性アミロプラストを含む柔細胞内の微細構造における種・品種・系統間の共通性および根冠コルメラ細胞との類似性の検証も行う。手法としては、透過型電子顕微鏡による微細構造レベルの観察を行う。また、試料調整では、凍結活断法とオスミウム軟浸法を用いて試料内部を露出した後、走査型顕微鏡で三次元的な高倍率観察も行い、多角的な形態・構造の解析を実施する。 〔課題2〕 塊茎形状の成立に関わるシグナル伝達の仕組みの検証: では、幾つかの形状の異なる塊茎を用い、且つ、倒置、横倒し、回転などの重力刺激処理した塊茎を用いて、Caの局在性・存在量の解析を走査型電子顕微鏡装着型のエネルギー分散型X線分析装置により、反復回数を増やして解析を深める予定である。 〔課題3〕 塊茎形状の成立と植物ホルモンとの関係性の解明: では、植物ホルモンと塊茎形状の成立との関係性について明らかにする実験を行う。形状の異なる塊茎および重力刺激処理した塊茎を用いて、オーキシン含量に差が生じるのかどうかを前年度に引き続いて確認する。これまでオーキシンの定量では、これまでのオーキシンアッセイキット (Phytodeteck IAA test kit)に加えて、高速液体クロマトグラフィー法の使用も検討している。また、引き続きオーキシンの濃度勾配に関与する膜輸送体関連の遺伝子の探索に加え、in situハイブリダイゼーション法による遺伝子発現の場所、RT-PCR法やノーザンブロッティング法により遺伝子発現量についても調査を進めていく。
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[Journal Article] Quantitative trait loci associated with tolerance to seed cracking under chilling temperatures in soybean.2015
Author(s)
Yamaguchi, N., Taguchi-Shiobara, F., Sayama, T., Tomoaki, M., Kawasaki, M., Ishimoto, M. and Senda, M.
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Journal Title
Crop Science
Volume: 55
Pages: 2100-2107
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Early-maturing and chilling-tolerant soybean lines derived from crosses between Japanese and Polish cultivars.2015
Author(s)
Yamaguchi, N., Kurosaki, H., Ishimoto, M., Kawasaki, M., Senda, M. and Miyoshi, T.
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Journal Title
Plant Production Science
Volume: 18
Pages: 234 - 239
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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