2015 Fiscal Year Research-status Report
イネの窒素によるヒストンのアセチル化を介した光合成の制御に関する研究
Project/Area Number |
15K07274
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
斉藤 和幸 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (00215534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / Rubisco遺伝子 / 窒素 / 転写制御 / クロマチン構造 / ヒストン修飾 / 光合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
Rubisco遺伝子の発現量は硝酸アンモニウムの供給により約15倍に増加した。この時、Rubisco遺伝子のコード領域におけるRNAポリメラーゼⅡの結合レベルは硝酸アンモニウムの供給により約12倍に高まっていたことから、窒素供給によるRubisco遺伝子の発現誘導は転写レベルでの制御を伴っていることが示唆された。そこで、Rubisco遺伝子のクロマチン構造について検討した。Rubisco遺伝子のプロモーター領域およびコード領域における単位DNAサイズ当たりのヌクレオソーム量は硝酸アンモニウムの供給により減少した。したがって、Rubisco遺伝子は窒素によりクロマチン構造が弛緩するため、転写活性が高まるものと考えられる。また、転写の活性化に関わるヒストンH3のN末端より4番目のリシンのトリメチル化(H3K4me3)、9番目と14番目のリシンのアセチル化(H3K9acとH3K14ac)は、プロモーター領域およびコード領域のいずれにおいても硝酸アンモニウムの供給によりレベルが高まった。一方、転写抑制に関わるヒストンH3のN末端より9番目のリシンのジメチル化(H3K9me2)レベルはコード領域においてのみ硝酸アンモニウムによって低下した。 以上の結果より、Rubisco遺伝子は窒素によりクロマチン構造が弛緩すること、及び転写の活性化に関わるH3K4me3、H3K9ac並びにH3K14acレベルが高まり、転写抑制に関わるH3K9me2レベルが低下することによって転写活性が高まり、発現量が増加することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の通りに、Rubisco遺伝子の窒素による発現誘導がクロマチン構造の変化とヒストンH3の修飾レベルで制御されていることが示めせたため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. イネには17種類のヒストン脱アセチル化酵素遺伝子が存在する。その中から窒素濃度が高まると発現レベルが低下するヒストン脱アセチル化酵素遺伝子を明らかにする。 2. 1.で見出したヒストン脱アセチル化酵素遺伝子について、発現量を増加させた変異体および発現量を減少させた変異体を作出し、Rubisco遺伝子のクロマチン構造、ヒストンH3テールのアセチル化レベル、転写活性、発現量および光合成能力を野生型のものと比較、検討する。 3. 光合成能力の高いハバタキ、光合成能力の低いササニシキと日本晴について、窒素濃度を変えて栽培し、穂揃い期に止葉のRubisco量、Rubisco遺伝子の発現量、Rubisco遺伝子のクロマチン構造及びヒストンH3テールの修飾レベル、光合成速度と 1.で見出したヒストン脱アセチル化酵素遺伝子の発現量との関係を比較、検討する。
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Research Products
(5 results)