2016 Fiscal Year Research-status Report
イネの窒素によるヒストンのアセチル化を介した光合成の制御に関する研究
Project/Area Number |
15K07274
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
斉藤 和幸 九州大学, 農学研究院, 准教授 (00215534)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | イネ / Rubisco遺伝子 / 窒素 / ヒストン修飾 / ヒストン脱アセチル化酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、イネにおいて窒素濃度の上昇によりRubisco遺伝子の発現量が増加するのは、Rubisco遺伝子のヒストンH3リシン9とヒストンH3リシン14のアセチル化レベルが上昇するためであることを示唆した。平成28年度は窒素濃度の上昇によりRubisco遺伝子のヒストンH3のアセチル化レベルが上昇するメカニズムを解明するため、ヒストン脱アセチル化酵素について検討した。イネの核ゲノムには17コピーのヒストン脱アセチル化酵素遺伝子が存在する。全てのヒストン脱アセチル化酵素遺伝子について窒素濃度の上昇にともなう発現量の変化を調べたところ、HDA713遺伝子とHDT70遺伝子の発現量が減少しており、HDA713遺伝子の発現量の減少が大きかった。そこで、HDA713遺伝子とRubisco遺伝子のヒストンH3のアセチル化レベルとの関係を明らかにするため、HDA713遺伝子の発現量を変化させた形質転換イネを作出することにした。 まず、HDA713遺伝子のcDNAを過剰発現用バイナリーベクターpH7WG2とRNA干渉用バイナリーベクターpHb7GW-I-WG-UBILに組込んだプラスミドを作成し(HDA713 in pH7WG2およびHDA713 in pHb7GW-I-WG-UBILと名付けた)、アグロバクテリウムEHA105に導入した。アグロバクテリウムを胚盤より誘導したカルスに感染させた後、ハイグロマイシンにより形質転換カルスを選抜した。選抜したカルスを再分化させた後、土壌に移植した。HDA713 in pHb7GW-I-WG-UBILが導入された形質転換イネが5個体得られた。一方、HDA713 in pH7WG2が導入された形質転換イネは得られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
窒素濃度の上昇にともないRubisco遺伝子のヒストンH3のアセチル化レベルを上昇させている原因遺伝子の候補としてヒストン脱アセチル化酵素遺伝子HDA713を見い出した。そこで、HDA713遺伝子とRubisco遺伝子のヒストンH3のアセチル化レベルとの関係を明らかにするため、HDA713遺伝子の発現量を変化させた形質転換イネを作出することにした。平成28年度はHDA713遺伝子の発現量を減少させた形質転換イネは作出できたが、HDA713遺伝子の発現量を増加させた形質転換イネが作出できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
1. HDA713遺伝子の発現量を増加させた形質転換イネを作出する。 2. HDA713遺伝子の発現量を減少させた形質転換イネとHDA713遺伝子の発現量を増加させた形質転換イネについて、Rubisco遺伝子のクロマチン構造、ヒストンH3テールのアセチル化レベル、転写活性、発現量および光合成能力を野生型の日本晴と比較する。 3. 窒素濃度を変えてHDA713遺伝子の発現量を減少させた形質転換イネ、HDA713遺伝子の発現量を増加させた形質転換イネおよび野生型の日本晴を栽培し、Rubisco遺伝子のクロマチン構造、ヒストンH3テールのアセチル化レベル、転写活性および発現量を比較する。
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