2015 Fiscal Year Research-status Report
葉蒸散の育種的強化はイネ群落を冷涼化して高温障害を回避させうるか?
Project/Area Number |
15K07278
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Research Institution | National Institute for Agro-Environmental Sciences |
Principal Investigator |
福岡 峰彦 国立研究開発法人 農業環境技術研究所, その他部局等, 研究員 (40435590)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 群落微気象 / 穂層気温 / 高温不稔 / 回避性 / 水稲 / 変異体 / 多蒸散 |
Outline of Annual Research Achievements |
水稲の葉身からの蒸散を育種的に強化することで得られる潜熱放散の増大は、群落内の冷涼化を通じて穂周辺の暑熱環境を緩和し、高温不稔等の高温生育障害を回避させる効果を示すことが期待される。本課題は、水稲の多蒸散変異体系統を材料として、高知県内で実施する現地高温遭遇実験と、茨城県内で実施する開放系穂層温暖化実験を組み合わせてこれを実証しようとする。 本年度は高知県内に試験サイトを設定し、平成28年度から高知県内で実施する予定の本試験に準じた規模で、多蒸散変異体系統およびその原品種を圃場において栽培した。その結果、5月上旬に移植を行うことで、例年現地で最も高い気温が観測されている8月上旬に、多蒸散変異体とその原品種がほぼ同時に出穂および開花を迎えることを確認した。また、群落微気象観測装置MINCERを現地において運用するための準備を整え、これを実際に開花期の穂層を対象とした予備的な調査に投入して観測データを得た。その結果、開花期の晴天日の日中に、多蒸散変異体は群落内穂層の気温を原品種に比べて平均で0.4℃、最大で0.9℃低下させられることが確認され、所期の群落冷却効果が高知県内の栽培条件でも得られることがわかった。以上により、平成28年度より現地高温遭遇実験を本格的に開始するにあたってその前提となる一連の基礎的知見を得た。 また、平成28年度から茨城県内で実施する予定の開放系穂層温暖化実験についても所要の準備を整えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は平成28年度より開始する本試験を滞り無く実施しうる体制を構築するための準備期間として、一連の準備を着実に実施した。その結果、所要の準備が整い、平成28年度より支障なく本試験を実施できる見込みとなったことから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
計画通り、平成28年度から高知県内における現地高温遭遇実験と茨城県内における開放系穂層温暖化実験を開始し、多蒸散変異体系統と原品種を対にして供試する。いずれの実験についても同一様式で3ヵ年繰り返すことで、高温不稔等の高温生育障害の発生状況の実測データセットを幅広い気象条件において蓄積し、多蒸散変異体が備えると見込まれる、高温生育障害に対する回避効果を定量的に評価していく。
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Causes of Carryover |
計画的な執行に努めたことで実支出額はほぼ見込み通りとなったが、効率的な執行等により結果的に少額の次年度使用額が生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
高知県内における現地調査の際に使用するレンタカーの燃料代については、市場価格の変動が予期されるほか、現地調査時の天候や実験材料の生育の進行状況によっては移動回数や距離が増大し、実際の所要額が見込みを上回る可能性がある。このような場合でも本課題を滞りなく実施するために次年度使用額を充当する。
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