2016 Fiscal Year Research-status Report
ナスの難防除性土壌病害に対する新規の複合防除技術の確立
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15K07299
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
松添 直隆 熊本県立大学, 環境共生学部, 教授 (50239018)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 太郎 滋賀大学, 教育学部, 准教授 (90725053)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 植物土壌病害 / 生物的防除法 / 非病原性細菌 / ナス / 半身萎凋病 / 青枯病 |
Outline of Annual Research Achievements |
青枯病菌の表現型変異株(PC株)を利用した青枯病と半身萎凋病の複合防除システム技術の確立を目的とし、以下の実験を行った。 実験Ⅰ)ナス種子へのPC株の接種が発芽および生育に及ぼす影響調査 1)無菌実験系(PC株の菌液または滅菌水を染み込ませたろ紙上に種子を置床)において、PC株の菌液を種子に接種した結果、PC株の濃度に関わらず、ほとんどの個体で発根したが、その後の幼根、胚軸の生長は全ての濃度で著しく抑制された。2)無菌実験系において滅菌水を染み込ませたろ紙上にナス種子を静置後、発根した個体をPC株の菌液を染み込ませたろ紙上に移した結果、PC株の濃度に関わらず、幼根および胚軸の伸長が抑制された。3)非無菌実験系においてセルトレイに異なる濃度のPC株を混和したバーミキュライトおよび培養土(菌液:土壌=1:2)にナスを播種した結果、PC株を土壌に混和すると対照区(滅菌水)に比べて発芽率は低下し、PC株濃度が高くなるにつれてその割合は高くなった。以上より、種子および発根直後の植物へのPC株の感染方法には検討が必要である。 実験Ⅱ) PC株の様々なナス品種(穂木品種13種、台木品種6種)に対する半身萎凋病防除効果調査 平成27年度の研究で明らかにした半身萎凋病防除に最適なPC株とその接種方法(苗への浸漬接種)を用いた。無処理区の台木品種は穂木品種に比べて発病が抑制される傾向にあったが、完全に発病しない品種はなかった。PC株を前接種した場合、半身萎凋病の発病率は穂木品種で3~67%、台木品種で30~81%低下し、PC株による半身萎凋病防除効果にナス品種間差が認められた。PC株を接種した場合に顕著に発病を抑制する台木品種が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの研究では、ナス青枯病防除に効果的なPC株、ナス品種および接種方法を報告した。本研究では、ナス半身萎凋病に効果的なPC株の接種方法および接種条件(菌の接種濃度、菌の生死、接種温度、接種方法)の確立を行った。さらに、PC株による半身萎凋病の防除効果には、PC株間差とナス品種間差があることを明らかにして、半身萎凋病防除に効果的なPC株とナス品種を特定した。以上の結果から半身萎凋病と青枯病防除に効果的なPC株、ナス品種および接種方法が明らかになり、最終年度で予定している「土壌病害の複合防除法の検討」に必要な成果を得ることができた。 PC株による病害防除機構を解明するためには、防除効果が異なるPC株・品種を用いて、抵抗性遺伝子の発現量や菌の定着量を比較することが有効であると考えられる。本研究から得られたPC株と品種の組み合わせ、すなわち「防除効果が低いPC株・品種」と「防除効果が高いPC株・品種」を供試して、PC株による病害防除機構の解明を進める予定である。 以上より、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
Ⅰ)「実用化に向けたPC株による土壌病害の複合防除法の検討」について:青枯病に対して効果的なPC株と半身萎凋病に効果的なPC株が異なることから、青枯病と半身萎凋病の複合防除法の確立には、2種類のPC株を利用した接種方法を検討する。また、本結果からPC株接種による半身萎凋病の防除に最も効果的な台木品種が明らかになり、本台木品種と穂木品種との接ぎ木苗にPC株を接種することで、高い発病抑制効果が得られる可能性がある。本台木品種は青枯病防除にも有効な品種であることから、台木品種とPC株を併用した青枯病と半身萎凋病の複合防除法を検討し、実際の栽培環境に近い条件において実証試験を行う。 Ⅱ)「PC株による病害防除機構の解明」について:防除効果が低いPC株・品種と防除効果が高いPC株・品種を供試して、PC株によって誘導される植物の抵抗性遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより解析する。その結果をもとにPC株による病害防除効果について考察する。
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Causes of Carryover |
平成28年度は、計画的に研究費を使用したため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、PC株による土壌病害の複合防除法の検討および病害防除機構の解明に必要な消耗品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)