2016 Fiscal Year Research-status Report
ファレノプシスのジベレリンによる花成誘導機構のRNAシーケンスによる解析
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15K07300
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
窪田 聡 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (60328705)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 花成 / FT / ジベレリン / ファレノプシス / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続いて,GAを施用されたファレノプシスの頂芽におけるRNA-seq解析を行った。GID1では4個,GID2では3個,DELLAでは7個,SPLでは15個,AP2では16個,FTでは5個,AP1では2個のホモログが見つかった。そのうち,GA施用によってPhSPL4,PhFT1-1,ORAP13が顕著に増加し,PhAP2-8が顕著に減少していたことから,これらがGAによる花成経路で主要に働いている可能性がある。GID1はGA施用によって減少,DELLAはGAによって増加し,外部からの大量のGA施用の影響を回避する反応が見られた。GA生合成遺伝子では,GA施用によってPhGA2ox1-2が顕著に増加,PhGA20ox3,PhGA3ox3-2が顕著に減少しており,GA施用によって内生GA量を減らす方向に遺伝子が制御されていた。 次に,低温処理した株の遺伝子発現解析を行うため,低温処理(昼25℃/夜20℃)を行い処理開始0,1,2,3,4,5,6,7,8,9週間後に腋芽または腋芽から伸長した花序の先端部を採取した。これらのサンプルから,前述のNGSから得られたGA生合成遺伝子のシーケンスから得られた,GA20ox,GA3ox,GA2oxの合計21個のホモログについてqPCRを行った。腋芽の新鮮重は低温処理開始3週間後から増加し,4週間後には肉眼で腋芽の発生が確認された。顕著な発現が見られたのはPhGA20ox1-2のみであり,低温処理開始2週間後に約2倍に増加し,9週間後には3倍に達した。一方,GA3oxとGA2oxの変化は比較的小さかった。過去のデータから低温処理によって腋芽中の内生GA量は処理開始4週間後から大きく増加することが明らかとなっている。このことから,内生GA量の増加は主にPhGA20ox1-2の発現量の増加によってもたらされているものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目までの実験計画ではGA処理株のNGSによるRNA-seq解析と個々の遺伝子発現解析を行うこと,および低温処理株のNGSによるRNA-seq解析と個々の遺伝子発現解析を行うこととなっている。このうち,本年度までに達成できたものはGA処理株の各種解析が完了し,低温処理株においてもGA処理株から得られたシークエンスを用いて低温処理株の各種遺伝子発現解析を優先して行った。このため,低温処理株のRNA-seqを行えなかったが,RNA-seq解析にも習熟し来年度は低温処理株のRNA-seq解析をより迅速に行えると考えられることから,概ね当初の予定にそって研究が進行していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り,低温処理株についてNGSのRNA-seq解析を行うとともに,GA生合成遺伝子以外の花成関連遺伝子の発現解析を行う。また,内生GAの定量については,ファレノプシスでは早期13位水酸化経路のGAが存在することが明らかとなっていることから,GA 抽出時に内部標準物質として重水素ラベルのGAであるd2-GA53,d2-GA19,d2-GA20,d2-GA1,d2-GA8を添加する。抽出操作を行った後,tC18 カラム,MCX カラム,DEA カラムで予備精製を行い,HPLCでGAを3つのフラクションに分け,これらのフラクションに含まれるGA を液体クロマトグラフ四重極型質量分析装置(UPLC/MS/MS)により定量する。
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Causes of Carryover |
平成28年度において,低温処理株のRNA-Seqを行う予定であったが,平成27年度に得たGA処理株のNGSによるRNA-seqについてさらに詳細な解析を加えたところ,多くの遺伝子が同定されたため,低温処理株のNGSによるRNA-Seqを行わずに,それらのシーケンスを元にした低温処理株の個々の遺伝子発現の解析を先行して実施した。このため,平成28年度実施予定であった低温処理株のNGSによるRNA-Seqに伴う費用が,次年度使用額として生じたものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度は,当初の計画において平成28年度に実行予定であった低温処理株のNGSによるRNA-Seq解析を実施する。
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