光照射が果樹の自発休眠に及ぼす影響の解明とその利用による発芽不良対策技術の確立

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 15K07304
• Research Institution: National Agriculture and Food Research Organization
• Principal Investigator: 伊東 明子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 果樹茶業研究部門 生産・流通研究領域, 上級研究員 (30355383)
• Project Period (FY): 2015-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 光 / ニホンナシ / 休眠 / LED

Outline of Annual Research Achievements

光照射がニホンナシの自発休眠進行に及ぼす影響を調査するため、露地のポット植え「幸水」を対象に、(1) 秋の休眠導入期から開花期（2016年10月～2017年4月）、および(2) 休眠導入期から自発休眠覚醒期（2016年10月～2016年12月末）に、青色光、赤色光、遠赤色光をそれぞれ約1umol/s/m2または約5umol/s/m2の光強度でLED光源により夜間連続照射し、腋花芽の開花日、小花数および小花の原基種類を調査して無処理の対照区と比較した。その結果、1umol/s/m2の光強度では赤色光および青色光で開花小花数の増加や開花日の前進が認められる一方、遠赤色光照射で原基数が減少する効果が認められた。ただしいずれの光質においても、5umol/s/m2の光強度では開花が促進される傾向が認められた。また、光照射を自発休眠覚醒期までで終了した場合でも開花日や花の形質に差は認められたが、その効果は光処理を開花期まで継続した方がより強い傾向であった。
ニホンナシの栽培上は、葉原基を含む花芽が増えるとその芽の次年度以降の再生産が可能となり有利である。その観点から今年度の結果を検討すると、5umol/s/m2の光強度で赤色光を自発休眠覚醒期まで照射した区において、葉原基を含む花芽が無処理の88％から98％に増加し、最も効果的であった。逆に赤色光や青色光では葉原基を含む芽の割合が減少する傾向であった。次年度も引き続き検討を行い、光照射処理の年次変動を確認する。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

昨年度実施した研究では光処理の処理間差が認められなかったが、これはエルニーニョの影響で冬期が非常に温暖であったことから、植物の生育が異常となったためと考えている。本年度、処理規模を拡大して実験したことにより光処理の効果の傾向がつかめたが、昨年度の実験結果が不良だった分、計画に1年分の遅れが生じてしまった。

Strategy for Future Research Activity

今年度、光処理の効果が光質だけでなく光強度にも影響されると考えられる結果が得られた。次年度はその点を確認するため、光照射ムラのより少ない処理方法を考案して実施することにより、処理効果の年次変動を確認する。また本年度分析しきれなかったサンプルの解析を行う。

Causes of Carryover

昨年度、光によるニホンナシ自発休眠進行への影響が確認できなかったため、光による自発休眠制御機構解明の分子生物学的解析実験は実施できなかった。そのため、一年分の分子生物学的解析にかかる費用に未使用額が生じた。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度は、昨年度光処理の効果が判然としなかったことから、光強度を変えて実験を行い、実験規模を拡大して光処理の効果を検討した。そのため、光の自発休眠への作用機構解明の分子生物学的解析実験の点数が増加し年度内に終了しなかったため、積み残しは次年度実施することとし、その調査・分析にかかる消耗品費や賃金に充てることにしたい。