2015 Fiscal Year Research-status Report
植物免疫におけるRNAサイレンシング機構のプライミング
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15K07307
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安藤 杉尋 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10442831)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | miRNA / サイレンシング / プライミング / 植物免疫 / ウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、RNAサイレンシング関連因子であるAGO2及びAGO3の遺伝子発現がプライミング誘導剤BTH処理によってプライミングされること、すなわち通常の状態に比べ、刺激に対して強く早く発現誘導される状態になっていることを明らかにした。一方で、AGO2およびAGO3はAGO1を介してmiRNAによる発現制御を受けること知られているため、AGO2及びAGO3のプライミングに対するmiRNAの関与を検討した。まず、AGO2およびAGO3をターゲットとするmiRNAであるmiR403とAGO1をターゲットとするmiR168の蓄積量をノーザンブロット法によって解析した結果、BTH処理によるプライミング誘導時に両miRNAの蓄積量が増加すること、さらにmiR168についてはプライミング誘導後のストレス処理によって、さらに増加することが明らかになった。このことから、プライミング状態の形成にmiRNAが関与する可能性が考えられた。一方で、miRNA生合成が異常なhyl1-2変異体では、ウイルス抵抗性が亢進し、さらにAGO2およびAGO3の発現が恒常的にプライミング状態になることが明らかになった。このことからhyl1-2おけるmiRNAの産生異常がAGO2などのプライミングを促進し、その結果ウイルス抵抗性が亢進される可能性が考えられた。 また、プライミング誘導時のAGO2プロモーターの構造変化がプライミングに影響する可能性については、ヒストンH3タンパク質の第4リジンのトリメチル化(H3K4me3; 遺伝子活性化の指標)が増加することが明らかになっていたが、さらに詳細に解析するため、FAIRE法によるクロマチン密度の解析を行ったところ、AGO2の転写開始点付近は常時クロマチン密度が低く、転写可能な状態と判断された。現在、このようなクロマチン構造が転写因子等のアクセッシビリティ―にどのように影響するか検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プライミング誘導時にmiRNAの変動が認められたこと、およびhyl1-2変異体におけるプライミング異常とウイルス抵抗性の変化が確認されたことから、RNAサイレンシング機構のプライミングにはなんらかの形でmiRNAによる遺伝子発現制御機構が関連していることが把握できた。 さらに、AGO2プロモーターのクロマチン構造の解析についてもFAIRE法やChIP法による解析が進行中であり、おおむね順調に進んでいると判断している。 今後解析に用いる、ヒストン修飾関連の変異体やmiRNA制御系の変異体についてもそれぞれ多重変異体を作出するため交配を行い、ある程度準備が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の実験を引き続き行うとともに、研究計画に従い以下の解析を行う。 ①プライミングされたサイレンシング機構により、ウイルスゲノムRNAが速やかに分解されることで抵抗性が増強されているかどうか確認することを目的として、ウイルス由来siRNA含量の変動をノーザンブロット法によって解析する。これにより、確認済みのAGO2, AGO3のmRNAレベルでのプライミングが、実際にサイレンシング活性の迅速な促進を誘導していることを示す。 ②miR403およびmiR168遺伝子についてpri-miRNAやpre-miRNAの蓄積状況をノーザンブロット法によって解析する。 ③miR403およびmiR168遺伝子のプロモーター領域のクロマチン構造変化にAGO2との共通性があるかChIP法およびFAIRE法によって解析する。 ④ヒストンメチル化酵素や脱メチル化酵素の変異体、miRNA生合成関連変異体を用い、CMV抵抗性の変化やAGO2等の発現のプライミングへの変化を解析する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は全体に対して少額であり、研究費の執行は研究計画に従い、おおむね予定通りであった。一部購入予定の抗体などが未発注であったため残額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に従い、ChIP解析に使用する抗体等の購入に使用する。
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Research Products
(2 results)