2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07310
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
宍戸 雅宏 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (80302537)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホモプシス根腐病菌 / 白紋羽病菌 / 雑草 / 片利共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度で検証する計画であった仮説1「土壌病原菌は雑草根に片利共生している」について、計画に基づき、ウリ科植物ホモプシス根腐病菌(Diaporthe sclerotioides,以下Ds菌)およびナシ白紋羽病菌(Rosellinia necatrix,以下Rn菌)による土壌病害が自然発生している圃場から雑草を採取し、その根部から抽出したDNAを鋳型として種特異的プライマーを用いたPCR法によって病原菌の感染の有無を調査した。また、感染が確認された雑草種では、その感染量をリアルタイムPCR法によって定量した。 その結果、Ds菌汚染土では調査した31種の雑草中、イネ科のネズミムギ、メヒシバ、イヌムギ、エノコログサ、キク科のヒメムカシヨモギ、オオアレテイノギク、ブタクサ、ヨモギ、スベリヒユ科のスベリヒユ、マメ科のシロツメクサ、カタバミ科のオッタチカラバミ、オオバコ科のオオバコ、カヤツリグサ科のカヤツリグサ、ラン科のネジバナ、ウリ科のアレチウリの15種からDs菌の感染が確認された。特に、アレチウリおよびブタクサから検出されたDs菌量は宿主のメロンと同等またはそれ以上で、強い共生関係が示唆された。 一方、Rn菌汚染土では調査した16種の雑草中、イネ科のイヌムギ、ナデシコ科のミドリハコベ、ヒルガオ科のヒルガオ、ツユクサ科のツユクサの4種からRn菌の感染が確認され、この中でイヌムギ、ヒルガオ、ツユクサ根でのRn菌の感染量は判定植物であるキバナルピナスと同等またはそれ以上であった。また、これら2種類の病原菌に感染していた雑草根に、これらの病害に特徴的な病班は認められなかったことから、仮説1は肯定されると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の研究計画で懸念された障害は、土壌や植物体中に存在するPCR阻害物質による標的DNAの増幅効率の低下であった。実際、関東平野には黒ボクと称される火山灰土壌を主体とした関東ローム層が広がっているため、抽出されるDNA量が安定せず、リアルタイムPCRによる菌の感染量の再現性は低かった。この場合、リアルタイムPCRにTaqManプローブ法を用い、土壌や植物中に存在しないDNA配列を内部標準としたマルチプレックス・リアルタイムPCR法を採用することで解決を図る予定であった。しかし、この方法では労力、時間、経費が掛かり過ぎるため、リアルタイムPCR法に代わる検定法として、幼苗検定-最確値(MPN)法を開発し、それを用いることで簡易かつ安価に病原菌の消長を調査できるようになった。 さらに、Ds菌の片利共生が病原菌の直接的な侵入・感染によるものではなく、植物寄生性線虫を介した間接的な侵入・感染が疑われたため、ネコブセンチュウによる本菌の感染への影響を調査した。その結果、ネコブセンチュウによるDs菌の感染助長効果は認められなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
仮説2「雑草根との共生は土壌病原菌の感染源ポテンシャルを増大させる」の検証を行う。具体的には、Ds菌およびRn菌との片利共生が明らかになった雑草種の中から、種子が入手できるものを選抜した後、リアルタイムPCR法による病原菌の定量および幼苗検定-最確値(MPN)法によって、雑草根によるこれらの病原菌の感染源ポテンシャルへの影響量を調査する。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、設備備品として定量PCRシステムAgilent Mx3000P(1台×2,820千円)を購入する予定であったが、2,820千円は当該年度の所要額を超過していること、及び千葉大学の別予算でApplied Biosystem社のStepOnePlusが学部共通機器として導入されたこと、の2点からAgilent Mx3000Pの購入を変更し、グロースキャビネット等、他の必要物品の購入に当てた。このことから当該年度の予算額と使用額とに差が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本科研費に係る研究は、初年度では大学院生2名および学部4年生3名の5名体制で行っていた。2年目では、外国人研究者1名、大学院生4名および学部4年生3人の8名体制になる予定であり、物品費や旅費が当初予算では不十分であることが判明している。特に、植物体粉砕機をはじめ、DNA抽出用機器や定量PCR用試薬の物品購入は不可欠であり、2年目の研究遂行に初年度の差額分を有効活用する予定である。
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