2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K07325
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山内 靖雄 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90283978)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 高温ストレス / 環境ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者はこれまでに酸化ストレスシグナルの化学的本体として、α,β-不飽和カルボニル結合を持つ炭素鎖4~9の直鎖カルボニル化合物(RSLV)を見出だした。本研究課題では、RSLVがどのように植物に受容され、下流の遺伝子発現作用につながるのかを明らかにする事を目的としている。 現在、RSLVが関与する酸化ストレスシグナル電子伝達系には、1)HSFA1が関与する系と、2)HSFA1の関与しない系、の2つがあると想定される結果が得られている。1)HSFA1が関与する情報伝達系では、最上流のシグナル受容に機能するHSFA1とHSP70(またはHSP90)複合体形成にRSLVが影響を与えることが関わっていると考えている。そこで本研究計画ではRSLVがHSFA1とHSPの相互作用与える影響を、酵母Two-Hybrid系を用いてin vitroで解析する事を目的としている。平成27年度は、酵母Two-Hybrid系実験に必須のプラスミドの構築を行なった。2)HSFA1の関与しない系にはHSFA1とHSP複合体が関与しない未知の情報伝達系が関与している。本研究計画では動物の嗅覚における匂い物質受容と類似した機構が植物にも存在すると考え、Gタンパク質共役受容体(GPCR)の関与するシグナル伝達系の存在を仮定している。本研究計画では植物GPCRがRSLVの関与するシグナル伝達系で機能している可能性を見出だす事を目的としている。平成27年度は、GPCRを欠損しているアラビドプシス突然変異体の選抜、およびマイクロアレイ解析により、ヘキセナール処理後15, 30, 60分後のアラビドプシスサンプルにおいて発現が誘導されている遺伝子群の詳細な同定を行ない、平成28年度以降に必要となる材料と基礎データの蓄積を行なった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)HSFA1に依存するシグナル伝達系の解明については、当初計画通り、酵母Two-Hybrid系の実験に用いるプラスミド(Bait4種類、Prey2種類)の構築が平成27年度中に完了し、平成28年度は予定通り酵母Two-Hybrid系を用いた実験を行なう予定であり、順調に進展している。 2)HSFA1に依存しないシグナル伝達系の解明については、植物GPCRの遺伝子欠損株全37系統を選抜する事ができた。しかしマイクロアレイ解析により網羅的な遺伝子発現のデータを得る事ができたが、リアルタイムPCRやウエスタンブロットによる個別の発現解析が行なわれていないため、少し計画に遅れが生じている。 以上の進行状況から、現在のところ研究計画は「おおむね順調に進展している」と総合的に判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)HSFA1に依存するシグナル伝達系の解明については、平成28年度は予定通り、酵母を用いたHSFA1-HSP相互作用に対するヘキセナールの影響を解析する予定である。さらに、現在HSFA1の下流に位置すると考えられる転写因子(HSFA2, HSFA3等)を欠損したアラビドプシス変異体を入手し、ホモ体の選抜を行なっているところである。これらの突然変異体と野生株を用いて、ヘキセナール処理による最下流遺伝子(HSPなど)の発現誘導をリアルタイムPCR、またウエスタンブロットにより解析し、HSFA1,A2A3の関係性を明らかにする。
2)HSFA1に依存しないシグナル伝達系については、RSLVの受容機構を明らかにするために、受容体候補としてGタンパク質共役受容体(GPCR)が関与する情報伝達系に着目して研究を進めている。現在、アラビドプシスに存在するGPCR候補に加えその下流で機能するカルシウムチャンネルを欠損したアラビドプシス突然変異体を入手し、ヘキセナール感受性に変化が見られるものを選抜しているところである。平成28年度は、変化が見られた突然変異体を用いて、詳細なヘキセナール受容機構を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
本研究計画は平成27年度途中に追加採択されたため、研究期間が十分ではなく、一部の実験内容を次年度に繰り越す事とした。これが経費分が次年度使用額が生じた理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越し分は、平成27年度に行なう事ができなかった、マイクロアレイ解析、リアルタイムPCR等の遺伝子解析実験、およびウエスタンブロッティングに使用する各種抗体を購入する予定である。
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