2016 Fiscal Year Research-status Report
昆虫の多種感覚統合-嗅覚・視覚・振動感覚の利用システムの解明
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15K07327
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
深谷 緑 日本大学, 生物資源科学部, 研究員 (80456821)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安居 拓恵 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, その他部局等, 上級研究員 (80414952)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 視覚 / 振動 / フェロモン / カミキリムシ / Aromia bungii / 多種感覚情報 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫における多種感覚情報の統合利用システムの解明を目的とし、視覚、振動、さらに化学感覚(嗅覚または接触化学感覚)の個別の構造・機能と、統合作用の解析を進めてきた。本研究ではこれまで防御物質、視覚要因を利用する 移入種クビアカツヤカミキリ(クロジャコウカミキリ)、近縁のオオアオカミキリ、これらとは異なり振動依存性の高い、マツノマダラカミキリを主要材料として用いてきた。特にクビアカツヤカミキリは急速に被害を拡大しつつある侵略的移入種である。 申請者等はクビアカツヤカミキリのの振動ー視覚の関係について解析し視覚依存性の高さを評価、さらに風洞における行動解析の結果から、本種が配偶行動において嗅覚信号(性フェロモン)を用いているものと推測した。H28年度は徳島県内の桃園において、本種生雌雄成虫を誘引源とした黒色衝突板トラップを使用した野外試験を実施、野外での雌の嗅覚依存的な雄への定位を確認した。また本種の雌雄成虫それぞれの揮発性物質の分析結果から、両性共通の忌避物質成分のほかに雄特異的な成分を検出し、その中から活性成分である可能性の高い物質の構造を推定した。先述の徳島県の桃園において、このフェロモン成分候補物質の合成品を用いた野外誘引試験を行い、候補物質の活性を確認したことから、フェロモン構造解明へ大きく前進した。 このほかH28年度はオオアオカミキリの行動をモデル実験結果から解析、防御物質(嗅覚信号物質)による防御―受容行動の視覚依存的切り替えを証明するなど、多種感覚情報の利用システムを解明する上で重要な意義のある知見を得ている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アオカミキリ族のAromia bungiiについて視覚・振動依存性を確認し、28年度は雌を誘引する嗅覚物質の存在を野外で示した。この誘引性フェロモン候補物質の化学構造の推定を進め、推定構造物質合成品の野外試験も行った結果、フェロモン構造決定までの見通しを得た。以上は当初の予想を上回る急速な研究の進展と考える。目下、原著論文として投稿中2件、投稿準備中3件の成果報告があり早急な出版を目指している.なお生活史と系統からみた視覚-嗅覚-振動感覚依存性の関係について興味深い知見を蓄積しているが、統合的解析はH29年度に行う予定となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
H29年度はまずAromia bunngiiのフェロモン活性成分の同定にこぎ着けたい。次に嗅覚要因―視覚要因との複合作用を検討する予定である。これらの結果から視覚―嗅覚情報による効果的な行動制御法を開発し、この難防除侵入害虫の防除への応用の見通しを得たいと考えている。またアオカミキリ族の接近者識別、行動切り替えシステムについて検討を進める。さらにこれまでに得た結果から、視覚-嗅覚-振動感覚依存性の関係について、種間比較などを行い、各感覚情報依存性の進化、統合利用における系統や環境との関係の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度は化学分析に労力を集中したかたわら、振動の解析は他所の施設を利用して行った。また季節的に集中する作用の補助のためアルバイトを雇用した。一方、実験の進展によりH28年度後半は様々な可能性を考えて計画を考えなおし、データー解析を次年度に移行したためそれに関わる物品の購入を行わなかったのため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
動画データーの解析を行うために性能が十分なノートPCを購入する。またH29年度助成金と合わせ、実験補助者を雇用し、材料の管理や、装置の構造上協力者が必要な実験、時間が膨大にかかる作業などの補助を行っていただくための人件費・謝金として使用する。調査のための移動・現地滞在、共同研究者等との打ち合わせ、設備・文献利用のための旅費、研究公表のため学会出席の旅費などとして使用する。
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Research Products
(5 results)