2016 Fiscal Year Research-status Report
塩基類養分の貯蔵・供給源としての土壌微生物バイオマスの評価
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15K07337
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
浅川 晋 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (50335014)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 土壌微生物バイオマス / 塩基類養分 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌微生物バイオマスによる塩基類養分の保持量およびバイオマスから交換性・水溶性イオンへの流れを定量的に明らかにし、新たな土壌・肥培管理技術展開への基盤とすることを目的とする。 水田、畑、放牧草地、果樹園および施設畑と地目・作物が異なり、さらに、黄色土、灰色低地土、黒ボク土、グライ土と土壌の種類も様々である圃場より土壌を採取し、バイオマスK、Ca、Mgをクロロホルム燻蒸抽出法により定量した。それらの存在量を明らかにするとともに、バイオマスC、N量や交換性陽イオン量との間の関係を解析した。 各土壌における面積当たりのバイオマスK量は、水田土壌および果樹園土壌では一般的な水稲およびカキあるいはブドウの養分吸収量の数割程度に相当すると見積もられた。交換性陽イオン量に対するバイオマス陽イオン量は、畑、果樹園土壌に比べ、水田土壌では大きく、水田土壌における微生物由来養分の重要性が示された。さらに、バイオマスK量とバイオマスC量の間には水田土壌と畑、果樹園土壌ともに有意な正の相関が認められたが、バイオマスK量と交換性K量の間には水田土壌でのみ有意な正の相関が認められ、地目ごとでバイオマスKと交換性Kの間の関係性が異なると考えられた。また、バイオマスCa、Mg量とバイオマスC量との間に相関は認められず、特にバイオマスK量はバイオマスC量に強く規定されていると考えられた。以上より、交換性陽イオンだけでなく、土壌微生物バイオマスに含まれる陽イオンも作物への重要な養分供給源であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な農耕地土壌の土壌微生物バイオマスK、Ca、Mgを測定し、存在量を明らかにするとともに、バイオマスC、N量や交換性陽イオン量との間の関係の解析を予定通り進めた。なお、すでに発表済みの水田のバイオマスKの論文のデータに計算間違いがあることが判明し、訂正記事(正誤表)を掲載した(Soil Sci. Plant Nutr., 62, 570 [2016])。それに伴い、昨年度得られた各元素の溶出率(kファクター)の値を取りまとめた投稿原稿は一旦取り下げの処理を行なった。正しく算出後に投稿をやり直す予定である。また、今年度得られた様々な農耕地土壌の土壌微生物バイオマスのデータと解析結果についてもそれらのデータを用いて、最終的な計算を行なっているところである。いずれの場合も、結論には影響を及ぼさないことを確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定通り、土壌微生物バオマススK、Ca、Mgの代謝回転速度の測定を行う計画である。すでに、そのための予備実験を一部進めているところである。また、3年間で得られたデータより、塩基類養分の貯蔵、供給源としての土壌微生物バイオマスの評価と総括を行うことを予定している。
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Causes of Carryover |
消耗品の購入額が予定よりもわずかに少なくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品購入に充当する予定である。
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Remarks |
受賞:SSPN Award(受賞者:山下昂平、本庄弘樹、西田瑞彦、木村眞人、浅川晋、授与者:一般社団法人日本土壌肥料学会、受賞年月日:2016年4月4日)
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