2016 Fiscal Year Research-status Report
植物はSAMSを介したエピジェネティック制御により、アルミニウム耐性となるか?
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15K07339
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
江崎 文一 岡山大学, 資源植物科学研究所, 准教授 (90243500)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エピジェネティック制御 / アルミニウム(Al) ストレス耐性機構 / AvSAMS1遺伝子 / DNAのメチル化 / ヒストン蛋白質のメチル化 / ChIP解析 / Suvh4遺伝子 / Cross-resistance |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画の目的は、1)SAMSを介したエピジェネティック制御が植物のAlストレスにおいて存在するのかを検証すること、2)さらイネにも同様の発現制御系が存在し、Al耐性機構の誘導や耐性化に関連しているかを明らかにすることであった。 まず1)について「ChIP法とRT-PCR法を併用したヒストン蛋白質のメチル化状況の確認」を引き続いて行った。その中で3種類のメチル化ヒストンH3(H3K4me3, H3K9me3, H3K27me3)と特異的に結合するDNA領域をRT-PCR法で個別に定量し、コントロール株(Col-0株)とAvSAMS1形質転換株間で比較した。さらにウェスタンブロット法でゲノム染色体全体におけるメチル化ヒストン量の変化についても両株間で比較検討した。その結果、シロイヌナズナでは、ヒストンH3メチル化状況がAlストレスで変化すること、さらにその変動は比較した2株間で異なることが明らかになった。これらのことから、シロイヌナズナでは、AvSAMS1遺伝子で促進されるエピジェネティック制御がAlストレスに存在することが明らかとなった。 2)については当初、イネのOsSAMS1遺伝子変異株を用いる計画だったが、この株は入手できなかったため、シロイヌナズナを用いて、DNAまたはHistone のmethyltransferaseをコードするMET1, CMT3, ATX1, ATX2, SUVH4遺伝子がAlストレスにおいてもこの機構に関与するかを検討することにした。まず、各遺伝子の欠損変異株のAl感受性を検討したが、どれもCol-0株と有意な差が認められなかった。次にMET1, ATX1, SUVH4変異株とCol-0株を用いてマイクロアレイ法でAlストレス下でのゲノム全体での発現量の変化を検討した所、SUVH4変異株とCol-0株との間で発現パターンの差異を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はイネのOsSAMS1遺伝子変異株を材料として実施する計画だったが、入手できなかったため、シロイヌナズナでの同類の計画に変更せざるを得なかった。しかし、このことがむしろ5種類もの遺伝子の検討に繋がったので、研究に幅が出来たと思われる。必ずしも基幹作物のイネに拘らなかったのが良かった様だ。最初は方針の変更による遅れが生じたが、直ぐに挽回できたと思う。むしろ5つの遺伝子の中から、最も関与が期待できるSUVH4変異株を選び出し、本格的な解析が開始できたのは良かった。 現在、この株とCol-0株を比較しながら、Histone methyltransferaseのAlストレス下でのエピジェネティック制御との関わりをおおむね順調に検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は最終年に入るので、以下の2項目を進めながら、3年間の研究全体のまとめと課題点の洗い出しも進める。 1)メチル化ヒストン蛋白質と結合するゲノムDNA領域の解析の続行とAlストレス下での遺伝子の発現パターン、 DNAのメチル化状況、ヒストンのメチル化状況の3者間の関連性の総括 メチル化修飾を受けたヒストンH3蛋白はゲノムDNAとの相互作用様式を変化させ、その部位の遺伝子の発現を調節する。Alストレスではメチル化されたヒストンH3蛋白はどの遺伝子との結合様式を変化させるのかについて、2年目に引き続き、検討を継続し、完了する。これらを通して、エピジェネティック制御を介したゲノムDNAやヒストンのメチル化とAl耐性機構との関わりについて総合的に考察する。 2)Alストレス以外の条件でのエピジェネティックな制御の有無の検討 他のストレス条件下ではエピジェネティック制御は作用するのか?を明らかにする。そのために、diamide酸化ストレスにおいてAvSAMS1遺伝子発現株を用いて、マイクロアレイ法で制御機構の有無を確認する。さらにdiamide酸化ストレスによるDNAのメチル化の状況をいくつかの遺伝子について検討する。既に上記株はdiamide酸化ストレスに対して高耐性になることを明らかにしているので、これらを通してエピジェネティック制御により多種のストレス耐性(Cross-resistant)をシロイヌナズナに付与できるかの総括も行う。
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Causes of Carryover |
新規に計画したマイクロアレイ実験のための消耗品購入費が必要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マイクロアレイ実験に用いるハイブリ用のスライドガラスとDNAの蛍光標識用試薬類の購入の一部に充てる予定である。
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Research Products
(5 results)