2017 Fiscal Year Research-status Report
原核生物Hsp90(HtpG)と新規ClpBのシャペロン作用機構の解析
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15K07349
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
仲本 準 埼玉大学, 理学部, 准教授 (30192678)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 分子シャペロン / ClpB / DnaK / Hsp90 / DnaJ / シアノバクテリア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、シアノバクテリアの二種類のClpBに関する比較生化学的解析を主に行った。これまでに、ClpB1は、DnaK2/DnaJ2/GrpEシャペロン系(DnaK2シャペロン系)と協調して凝集塊を可溶化(脱凝集)するのに対して、ClpB2は、DnaK2シャペロン系のシャペロン作用を阻害することを明らかにした。これらのClpBとDnaK2シャペロン系の協調(阻害)作用に及ぼす塩酸グアニジンの影響を調べた。塩酸グアニジン(グアニジウムイオン)は、①ClpBに結合しATP加水分解を阻害すること、②大腸菌ClpBの抑制型を安定化しDnaKとの相互作用を消失させることが知られている。塩酸グアニジンは、ClpB1のATPase活性を阻害し、DnaKとの協調的シャペロン作用を完全に消失させた。ClpB1の脱凝集活性は全く観察されなくなった。一方、この化合物存在下でClpB2のATPase活性は減少したにもかかわらず、DnaK2シャペロン系への阻害効果には影響がみられなかった。これらの結果は、ClpB2が、DnaK2とは相互作用しないことを示唆するものである。そこで、DnaKとの相互作用部位であるMドメインに注目し、ClpB2のMドメインをClpB1のそれと交換した。ClpB1のMドメインを有するClpB2のATPase活性は2倍になり、さらにこのドメインスワッピングによりDnaK2シャペロン系に対する阻害効果も軽減された。しかしながら、ClpB1のように脱凝集活性をもつには至らなかった。これらの結果から、ClpB2がClpB1や大腸菌のClpBとは異なる新規なClpBであることがさらに確認され、ClpB2への進化には、Mドメイン以外のドメインの変異も関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
塩酸グアニジンがClpB1とClpB2の生化学的性質に及ぼす影響を調べることによって、ClpB1は大腸菌のClpBと同様の性質をもつが、ClpB2はこれらのClpBとは顕著に異なることが明らかになった。興味深いことに、ClpB2は、DnaK2と協調的に働かないという今までに例のない特徴をもつことが示唆された。さらに、ClpBとDnaKの協調的シャペロン作用に必要とされるMドメインの、ClpB1とClpB2の間における交換実験によって、祖先型ClpBのClpB2への進化にはMドメイン以外のドメインも関与することが示唆された。 これらの結果は、ClpB2と大腸菌ClpBやClpB1との違いを際立たせるものであった。本研究の目的が、ClpB2の独自性や進化の過程を理解することなので、上記の研究成果は評価しうるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果によって、ClpB2の生化学的性質が、大腸菌のClpBやClpB1と著しく異なることが明らかになったが、生理学的に大きく異なる点としては、ClpB2が細胞の生存に必須のタンパク質であることを挙げることができる。ClpB2が、詳細に研究されてきた大腸菌ClpBや酵母Hsp104とは異なり、必須性を有する理由を明らかにするには、ClpB2の基質を同定する必要がある。今後、酵母ツーハイブリッド系のゲノムライブラリーを用いて、ClpB2と相互作用する基質タンパク質(候補)の探索を進める。 また、これまでの研究成果を、国際会議で発表し、学術論文に纏める。本研究では、HtpGとDnaJ2との相互作用に関する研究も行ってきたが、その研究成果についても、国際会議や学術論文等の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
研究計画調書や前年度実施状況報告書における研究費使用計画では、国際会議等における研究成果発表に用いると書いたが、当該年度における2回の国際会議への出張費は、埼玉大学のグローバル化プロジェクトなどの支援を受けて支払うことができた。そのために、次年度使用額が生じた。 これらの助成金は、「今後の研究の推進方策」で書いた本研究のさらなる発展を目的とした実験のために必要とされる研究費や、次年度の国内・国外の会議で、本研究の成果を発表するために必要とされる旅費に用いる予定である。
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