2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞質とミトコンドリアのNADP(H)濃度の制御を司るNADキナーゼの翻訳後修飾
Project/Area Number |
15K07387
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河井 重幸 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00303909)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 幸作 摂南大学, 理工学部, 教授 (90142299)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | NADキナーゼ / 翻訳後修飾 / NADP+ / NAD+ / フォスフォプロテオミクス解析 / Sirtuin / リン酸化 |
Outline of Annual Research Achievements |
NADキナーゼ (NADK) はNADP+の合成酵素であり、ヒト細胞では細胞質局在型NADKとミトコンドリア (Mit) 局在型NADK (MitNADK: 応募者が特定; Nature Commun. 2012) が機能しているが、両NADKの細胞内における機能制御の仕組みはよく分かっていない。一方、プロテオミクス解析により両NADKの多数の翻訳後修飾 (リン酸化など) 部位が明らかになっている。ヒトの両NADKの機能制御の仕組みを明らかにするため、当該年度研究では、模倣リン酸化(リン酸化部位であるSer [S]またはThr [T] 残基をAsp [D] 残基へ置換)した組換え精製ヒトMitNADKのin vitroにおけるNADK活性を詳細に調べた。その結果、模倣リン酸化MitNADK組換え精製酵素(MitNADK S188D、S289D/E、S376D)のin vitroにおけるNADK活性低下、就中MitNADK S188Dの活性の完全消失等を見出した。ヒトmitNADK Ser-188のリン酸化は、高頻度かつ複数のフォスフォプロテオミクス解析で検出されている。さらにSer-188はMitNADKのホモログに特有なMotif 2に高度に保存される。これらも考え併せると、特に当該Ser-188のリン酸化は重要な役割を有すると推察された。他方ヒト細胞内におけるMitNADKのリン酸化のPhos-Tagシステムによる検出を試みたが、検出には至らなかった。一方、Ser/Thr残基すべてをAla残基に、Tyr残基をPhe残基に置換したリン酸化抵抗性MitNADKを構築し、ヒト細胞に導入したが当該NADKの発現量が低かった。さらに、FLAG融合Sirt1-3遺伝子を入手し、ヒト細胞に導入した後、本ヒト細胞を回収した。関連発展研究としてNADKホモログ遺伝子を有さないDeinococcus radioduransのNADPH生成系に焦点を当て、当外細菌が強力なNADP+還元活性(NADPH生成活性)を示すことも明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MitNADKの研究成果に関しては、模倣リン酸化MitNADK組換え精製酵素(MitNADK S188D、S289D/E、S376D)のin vitroにおけるNADK活性低下、就中MitNADK S188Dの活性の完全消失等、MitNADKのリン酸化修飾の生理的意義をある程度を明らかにすることができた。Ser/Thr残基すべてをAla残基に、Tyr残基をPhe残基に置換したリン酸化抵抗性MitNADKも構築し、FLAG融合Sirt1-3遺伝子も入手できた。細胞内におけるMitNADKのリン酸化の検出も試みた。研究発表に関しては、原著論文1報、学会発表6件(うち国際学会2件、国際学会への招待講演1件)と、充分な発表ができた。以上の成果を踏まえて、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
特に以下の研究に注力する予定である。細胞質局在型NADK (CytNADK) のリン酸化が他のタンパク質との相互作用の制御にどのように関与するかを明らかにするため、「リン酸化により他の特定のタンパク質との相互作用を可能にし、その相互作用の結果CytNADK活性が活性化される」という作業仮説をたて、当該仮説の検証実験を行う。すなわちCytNADKのN末領域のSer-64(CaMKII依存的にリン酸化されることが別グループにより報告)をAsp残基(模倣リン酸化)、Ala残基(リン酸化耐性)各々に置換したCytNADKを構築し、これら、CytNADK、ベクターコントロール(pFLAG-CMV-5a)でヒト細胞HEK293Aをトランスフェクトし、リン酸化依存的に相互作用するタンパク質を特定する。in vitroによる再構成実験により、この相互作用が活性に及ぼす影響を詳細に明らかにする。NADKがSirtuinと相互作用するかどうかも明らかにする。
|
Causes of Carryover |
細胞質局在型NADKの研究遅延ならびに関連物品購入遅延のため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
特に細胞質局在型NADキナーゼの就中他タンパク質との相互作用に対する翻訳後修飾の役割の解明に注力する。関連物品も適切な時期に購入する。
|
Research Products
(7 results)