2016 Fiscal Year Research-status Report
植物のマグネシウムチャネルMRS2におけるアルミニウム阻害と輸送の分子機能的解明
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15K07399
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
石嶌 純男 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (70184520)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マグネシウムイオン / 膜輸送タンパク質 / アルミニウム / シロイヌナズナ / イネ / リポソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
シロイヌナズナおよびイネの MRS2 タンパク質について、以下の解析を行った。 1 シロイヌナズナ Mg2+ 膜輸送ファミリータンパク質 AtMRS2 の調製とカチオン輸送活性測定 細胞膜に存在する AtMRS2-10 を大腸菌で発現し、単離精製した。精製したタンパク質をリポソームに組込み、リポソーム内のカチオン濃度を、蛍光指示薬を用いて測定した。これまで、AtMRS2-10 は、Mg2+に加えて、Al も輸送し、その Mg2+膜輸送活性が、Al によって阻害されることを明らかにしてきたが、AtMRS2-10 は、Co2+、Ni2+、Zn2+ はほとんど輸送せず、AtMRS2-10 は、Mg2+を主に輸送するタンパク質であることが明らかとなった。 2 大腸菌 Mg2+膜輸送多重変異株によるシロイヌナズナAtMRS2 タンパク質の機能解析 生育に Mg2+要求性を示す大腸菌 Mg2+膜輸送多重変異株 (corA-、mgtA-、yhiD-) に、シロイヌナズナ AtMRS2-1 を発現させて、機能解析を行った。AtMRS2-1 は、変異株の Mg2+要求性を相補して低濃度のMg2+でも生育が可能となり、一方で、AtMRS2-1 を発現させた大腸菌変異株の生育は、Al によって大きく阻害されず、AtMRS2-1 は、AtMRS2-10よりも低い Al3+感受性を持つことが示された。 3 イネ OsMRS2 タンパク質の機能解析 イネはシロイヌナズナに比べて、Al 耐性である。イネの MRS2 タンパク質 OsMRS2-1 および OsMRS2-6 を大腸菌 Mg2+膜輸送多重変異株に発現させた。OsMRS2-1 および OsMRS2-6 はともに、大腸菌変異株の Mg2+要求性を相補したが、両者のMg2+輸送のAl3+感受性には大きな違いがあることが、示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
植物のマグネシウムチャネル MRS2 について、シロイヌナズナでは2つの MRS2 タンパク質 AtMRS2-1および AtMRS2-10について、イネでは OsMRS2-1 および OsMRS2-6 について、申請書に記載した通り、研究が進展している。AtMRS2-1 とAtMRS2-10 は、相同性は高いものの、Al に対する感受性に大きな違いがあることを、精製したタンパク質を組込んだプロテオリポソームおよび大腸菌 Mg2+膜輸送多重変異株による機能解析により明らかにした。一方、イネの OsMRS2-1 および OsMRS2-6も、大腸菌変異株の Mg2+要求性の相補能をもつことをはじめて示し、Al3+ 感受性の比較を可能とした。
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Strategy for Future Research Activity |
シロイヌナズナの AtMRS2 タンパク質については、精製タンパク質を組込んだリポソームおよび大腸菌多重変異株を用いて、Mg2+ や Al をはじめとする他のカチオンの膜輸送活性および Al による阻害の分子機能解析を進める。Al 感受性に差があることが明らかとなった AtMRS2-1 と AtMRS2-10 のキメラタンパク質を作成し、分子内の Al 感受性部位の解析を行う。 一方、イネのMRS2 タンパク質については、先行する OsMRS2-1 および OsMRS2-6 の結果を参考にして、細胞内局在の異なる OsMRS2 ファミリータンパク質の機能解析により、イネの OsMRS2 タンパク質群全体の機能解明を進めたい。
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Causes of Carryover |
今年度は、単年度としては、ほぼ計画通り使用し、前年度生じた「次年度使用額」(前年度未使用額)の一部を次年度に使用することとした。次年度に有効に使用する計画である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究は、現在、おおむね順調に進展しているので、交付申請書に記載した「研究の目的」に向かって、「平成29年度の研究実施計画」および「今後の研究の推進方策」にしたがって、主に、蛍光指示薬を中心とした消耗品を購入する計画である。また、本研究で得られた研究成果を積極的に学会において発表するための旅費を支出する計画である。
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Research Products
(8 results)