2018 Fiscal Year Research-status Report
イネ種子の発芽調節におけるエチレンシグナル伝達系のレドックス制御
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15K07400
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
森田 重人 京都府立大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (20295637)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 種子 / 発芽 / 休眠 / エチレン / レドックス制御 / イネ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではイネにおいてエチレンレセプターOsERS1の休眠・発芽における機能解析を行っている。平成30年度には以下の実験を行った。 ゲノム編集によって作出したOsERS1ノックアウト変異体系統について、平成29年度に観察された休眠性の上昇が、後代でも見られるかどうかを調査するため、T2個体を育成し、得られたT3種子を用いて完熟直後における休眠性を調査した。その結果、育成したT2個体の約1/4の個体のみで発芽率の低下が見られた。また作出した変異体全3系統のうち、1系統のみで発芽率の低下が見られ、他の2系統では発芽率の低下は見られなかった。以上の結果から、休眠性の上昇はOsERS1の変異とは直接関係しないことが示唆された。そこで休眠性が上昇していた系統については、新規な休眠性変異体の候補として、令和元年度以降解析を行うこととした。 またOsERS1の変異によって、発芽や初期生長に影響が見られるかどうかを調査するため、変異体のT2種子を播種し、発芽試験を行った結果、変異体系統はいずれも非変異体系統と比べて発芽特性に差は見られなかった。さらにエチレン前駆体(1-アミノシクロプロパン-1-カルボン酸)処理条件で、芽生えの初期生長を調査した結果、エチレン処理/無処理のいずれにおいても、シュートの伸長が変異体では促進されていた。これらの結果から、OsERS1はシュートの伸長抑制に機能していることが示唆された。 またタンパク質レベルでの解析を進めるため、OsERS1に対する抗体の作製を進め、合成ペプチドを抗原に用いて、特異的な抗体を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
OsGRXC2;2によるレドックス調節と発芽調節との関連を調べる目的で、酸化還元活性を持たない変異型OsGRXC2;2を過剰発現する形質転換系統の作出を進めているが、形質転換体はまだ得られていない。またOsERS1に対する抗体を用いて、OsERS1変異体系統における発現抑制をタンパク質レベルで確認する計画であったが、未実施である。この状況をふまえ、当初の計画は平成30年度で終了の予定であったが、研究期間を1年間延長することとした。
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Strategy for Future Research Activity |
OsERS1変異体において、エチレン応答が恒常的に上昇している可能性が考えられることから、変異体系統の芽生えにおいてエチレン応答性遺伝子の発現を調査する。 また変異型OsGRXC2;2の過剰発現系統の作出を継続し、形質転換系統を得る。形質転換体が得られ次第、後代の種子(T1種子)を用いて、発芽抑制が見られるかどうかを調査する。
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Causes of Carryover |
理由)研究が当初計画に比べ遅れており未実施の実験があることから、研究期間を延長するため。
使用計画)残り1年間の研究期間で必要となる試薬・器具等の購入に使用する。また、これまでに得られている研究成果を、学会発表、論文投稿するための支出に当てる。
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