2016 Fiscal Year Research-status Report
ヤエヤマサソリ由来のペプチド毒素LaIT1の昆虫選択的毒性発現機構の解明
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15K07412
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
宮下 正弘 京都大学, 農学研究科, 准教授 (80324664)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | サソリ毒 / 光親和性標識 / ペプチド / 受容体タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
LaIT1はヤエヤマサソリから単離された昆虫選択的ペプチド毒素である。LaIT1は昆虫特異的毒性を示すことから、それ自体が生物農薬として重要であるだけでなく、その作用機構研究から得られる情報は、新たな農薬の開発にとって有用である。本研究においては、LaIT1の作用機構についての知見を得ることを目的として、様々に標識されたLaIT1類縁体を合成し、その結合タンパク質の探索をおこなった。27年度は主に放射性ヨウ素の導入を想定した標識化合物を合成し、ヨウ素の導入が活性に影響を与えないことを明らかにした。そこで28年度においては、昆虫において特異的に結合するタンパク質の検出を目的として、光親和性標識を導入したLaIT1を合成した。光親和性標識としてアジド基を側鎖に含むフェニルアラニン(AzF)を用いた。LaIT1の配列にはPhe残基がN末端から2残基目に存在しており、その部位をAzFに置換することとした。この標識体([AzF]LaIT1)を合成し、殺虫活性を測定したところ、LaIT1とほとんど同等の活性を示したことから、アジド基の導入が活性に影響を与えないことが確認できた。この類縁体に対してさらに、Tyr側鎖へ放射性ヨウ素(125I)を導入した。得られた125I-[AzF]LaIT1を、カイコ中枢神経から抽出した細胞膜画分とインキュベートした後、UV照射して共有結合を形成させた。これをSDS-PAGEによって分離した後、LaIT1と結合したタンパク質をRIイメージングによって検出した。その結果、125I-[AzF]LaIT1が結合したと考えられるタンパク質の存在が確認できたことから、これがLaIT1の作用に関与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光親和性標識LaIT1を用いた実験によって、カイコの中枢神経の細胞膜画分にLaIT1が結合するタンパク質が存在することを示すことができた。このことから、現段階において本研究はある程度進展したと言える。しかしながら、この結合タンパク質の同定まではできておらず、さらに、それがLaIT1の毒性発現に直接関与している分子であるかどうかの評価が今後必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究においてはまず、特異的に結合することが分かったタンパク質の種類を同定し、その毒性発現機構との関連性を明らかにする。タンパク質の同定は質量分析計を用いることでできるが、これまでの実験によって得られたSDS-PAGEのバンドには他の無関係なタンパク質も多く含まれていることが分かっている。そこで、結合タンパク質を効率的に濃縮することを目的として、光親和性標識したLaIT1にさらにビオチンなどの濃縮操作用タグ分子を導入した類縁体を合成する。これを用いることで、非特異的に結合するタンパク質の混入を大幅に減少させることが可能となり、より確実なタンパク質同定ができると考えられる。また一方で、LaIT1の毒性とそのタンパク質との関連性を明らかにするため、作用標的と関連すると考えられるイオンチャネルへの作用を、電気生理学実験によって調べる。最終的にこれらの結果を統合してLaIT1の昆虫選択毒性発現機構を明らかにする
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