2016 Fiscal Year Research-status Report
ウーロン茶ポリフェノールの分子構造解明と生理機能発現機構の分子解析
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15K07427
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
柳瀬 笑子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (60313912)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長岡 利 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (50202221)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 烏龍茶ポリフェノール / ウーロンテアニン / 酸化 / コレステロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ウーロンテアニン合成時の副生成物に着目して研究を進めた。ウーロンテアニン類はカテキンから3段階の反応で生成することがすでに分かっている。化学合成反応における各段階の生成収率を詳細に検討した結果、1段階目の反応の収率が全体収率の低下につながっていることが明らかとなった。これは、カテキンの酸化反応の多様性があることを示しており、この段階の生成物が高分子ポリフェノールの構造の複雑さに関わっている可能性が示唆された。そのため副生成物の構造決定を試みた。現段階では構造決定には至っていないが、分子内にラクトン構造を有する2量体であることが明らかとなった。 また、ウーロンテアニン類の反応性を明らかにする目的で、その安定性について検討した。その結果、メタノールなどの有機溶媒中では1種類の化合物として存在するのに対し、水溶液中では環の開裂及び再環化を伴う2種類の構造を示し、平衡混合物として存在することが明らかとなった。さらに、その平衡比はガレート基の存在の有無で大きく異なり、上部ユニット側にガレート基が存在すると特に水中でのみ存在する化学種の割合が多くなることが明らかとなった。 ウーロンテアニン類及びカテキン類のコレステロール吸収抑制作用メカニズムに関する研究では、昨年度の研究の結果、そのメカニズムがガレート基とA環部から形成される疎水性領域への胆汁酸の取り込みによるミセル構造の変化にあることが強く示唆されたため、本年度は、さらに詳細に検討を行なうため、単結晶X線構造解析を目指した。一般的にタンパク質の結晶化に用いられ多くの結晶化条件の検討が容易なハンギングドロップ蒸気拡散法を用い、カテキン類と胆汁酸の一種であるタウロコール酸ナトリウムの混合結晶の作成を検討した。得られた結晶をX線構造解析及びHPLC分析等を行なった結果、目的とする混合結晶を得るには至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究で、ウーロンテアニン類の3段階の生成反応のうち、1段階目がその収率に大きく影響を与える、つまり副反応が多く起こっている可能性が示された。構造決定には至らなかったが、いくつかの副反応生成物と推定されるピークの単離には至り、部分構造から、B環部の芳香属性が失われていることが明らかとなった。昨年度の成果とあわせて考えると、ウーロンテアニンのような比較的安定な2量体の生成と、高分子化反応の進行の分岐点は最初のカテキン縮合反応にある可能性が示されたという意味では重要な知見であるといえる。 コレステロールミセル溶解性へのウーロンテアニン類の影響に関する研究では、計画当初は、ウーロンテアニン及びカテキンの化学修飾を行いコレステロールミセル溶解性への官能基及び電子密度の影響を調査する予定であったが、昨年度の研究の結果、そのメカニズムがガレート基とA環部から形成される疎水性領域への胆汁酸の取り込みによるミセル構造の変化にあることが強く示唆されたため、当初の計画については行なわなかった。昨年度の結果に基づいた計画変更により、より直接的にミセル成分とカテキン類の相互作用を観察するために混合結晶の作成とX線構造解析を目指したが残念ながら達成には至らなかった。本年度の結果から来年度は当初予定していた研究に戻して行なう必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度構造決定に至らなかった、ウーロンテアニン類の合成副生成物の構造決定に再度挑戦し、その結合パターンの多様性を確認する。また、昨年度の結果から、カテキンからウーロンテアニン類の生成反応における1段階目がカテキンの重合化反応の多様性の原因である可能性が示された。つまり2量化反応における結合位置の違いがウーロンテアニン類のような安定な2量体を与えるか、あるいは高分子化するかの境目であるといえる。これまで知られている低分子ウーロン茶ポリフェノールはいずれも位置及び立体選択的に生成しており、これはカテキンが酸化重合する際に自己会合しているためであると推定できる。そのため、カテキンの自己会合能がウーロン茶ポリフェノールの構造に与える影響は大きいと予想される。そこでカテキンが自己会合するのに必要な部分構造を明らかにするためモデル反応を構築し、どの部分が反応の選択性に大きく影響をしているが明らかにする。 コレステロールミセル溶解性のメカニズム解明については、混合結晶の生成が確認されなかったことからX線構造解析を用いた直接解析は断念し誘導化及び立体異性体の影響を調査する。具体的には、これまでの研究でそのメカニズムがガレート基とA環部から形成される疎水性領域への胆汁酸の取り込みがコレステロールのミセルへの溶解性の低下に起因していることが示唆されており、この疎水性領域の環境の変化を観察することでより詳細なメカニズムに関わる情報が得られると考えられる。そこで、カテキンの3位立体異性体、またフェノール性水酸基の修飾を行い、それら誘導体のコレステロールミセル溶解性への影響を明らかにする。
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[Presentation] Oxidation of Epicatechin2016
Author(s)
Kazuhiro Ucida, Kazuki Ogawa, Emiko Yanase
Organizer
the international Symposium on Natural Products for the Future 2016
Place of Presentation
Tokushima Bunri University
Year and Date
2016-09-01 – 2016-09-04
Int'l Joint Research
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